北朝鮮経済と核開発② 意外と安く作れる核兵器

北朝鮮の経済規模は秋田県と同レベルだが、それで核開発ができるのか。昨年1月のロイター記事によると、「専門家たちは正確な数字はよくわからないというが、韓国政府は核の支出は全部で11億から32億ドルと推計している」という。記事は、コスト削減のため、国産技術を使い、ただ働きさせていると伝えるが、「全部で(overall)」というのが、ウラン濃縮から核爆弾の製造までを、そして過去の実験まで含めたものを意味するとしたら、多くて3千数百億円というのは安上がりにすぎないか。

この記事は、また「グローバル・ゼロ(Global Zero)」という世界の核兵器ゼロを目指すグループの調査数字も紹介している。それによると、2011年の北朝鮮の核兵器支出は7億ドルで、核保有国の中では最下位の支出額だった。米国は613億ドル、北朝鮮のワンランク上はパキスタンで22億ドルという(Global Zeroのこのレポートを探したがいまのところ見つかっていない)。
北朝鮮と経済規模が同じ秋田県の一般会計予算が6014億円であることは前回に書いた。その比較に基づけば日本円で700億円ちょっとという数字は支出可能に見える。ただ、いまは2011年当時よりも核開発を強化しているだろうからお金の使い道は軍事に傾斜し国民の生活は圧迫されているだろう。
また、アメリカのニュース専門放送局のCNBCは、北朝鮮が60発の核兵器を保有しているとすれば、1800万ドルから5300万ドルの費用がかかっているだろうと伝えている。これも北朝鮮の経済規模からは負担が難しい額ではなさそうだ。

一方で、北朝鮮の経済が表に現われた数字よりももっと大きいのも確実だ。裏マーケットでの私的な取引が活発で、「グレーな経済は表の経済をしのぐほど」という専門家たちの言葉をロイター記事は伝えている。こうした裏マーケットで稼いだ富裕層への課税や国家による偽札づくり、保険金詐欺、中東へのミサイル部品の販売などの稼ぎが核開発につぎ込まれているという。
世界最大の核大国アメリカはいま、6800発の核兵器を保有している。1990年代から新しい核弾頭も核爆弾も製造してないそうで、現物をリフレッシュさせて管理しなければならない。そうしたコストを考慮すると、アメリカは核計画(nuclear program)に今後2、30年で2500億ドル投じることになるだろうと専門家は予測している(前述のCNBC記事)。北朝鮮のような小国には負担できない費用だ。
しかし、地球を何回も滅亡させるほどの大量の核兵器は北朝鮮には必要ない。100発規模の核兵器を持つ核小国でも世界を脅かすには十分だ。いまや小国が核を持てる時代になった。それは、世界経済の規模が全体的に底上げしたことやかつては極秘だった科学技術の知識が広まったこと(原爆の製造法がインターネットで流れたとのニュースもあった)、核の部品が価格的に入手しやすくなったからだろう。
北朝鮮をお手本とする小国が今後も登場する可能性はないだろうか。そして、金正恩が金王朝の存続のみならず、核小国連合の盟主にならんとする野心を抱きはしないだろうか。

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