「非核化」をめぐる米朝の深い溝

5~6月に予定されている初の米朝首脳会談の最大の焦点である「非核化」。それが実現されなければ、金正恩委員長が望む制裁解除、停戦協定から平和協定への転換、米国の脅威の除去は、一歩も進まない。それは、米国だけでなく、中国や国際社会も繰り返し言ってきたから正恩氏も百も承知しているだろうから、非核化への取り組みを約束することなく会談が終わることはまずあり得ない。

問題は、非核化を実現するまでの具体的な道筋をどこまで明示するかだ。過去に、非核化を世界に約束しながら反古を繰り返してきた北朝鮮だけに、確かな道筋をトランプ大統領が正恩氏から引き出すことができなければ会談は失敗に終わる。非核化の条件、その手順など交渉の問題点になりそうなものを整理してみた。

(1)「非核化」が意味する内容

そもそも「非核化」の意味するところが、米朝で食い違っている。米国が意味するものは、トランプ氏が4月24日の会見で明言している。「非核化」とは、「非常に単純で、(北朝鮮が)核兵器を除去することだ」という。米朝会談の場では、正恩氏に直接、非核化を要求するとも述べた(読売新聞)。

一方、北朝鮮にとっての「非核化」とは、「朝鮮半島の非核化」であり、韓国にある米軍の核も対象になっている。北朝鮮は、2016年7月6日に政府報道官声明を出し、北が非核化を受け入れるには、在韓米軍の撤退、韓国にある米国の核兵器の公表、いかなる場合でも北朝鮮に対し核で威嚇したり核を使用したりしないという確約など5項目を要求した(聯合ニュース)。

(2)北朝鮮が考える非核化の条件と手順

金正恩氏は3月、訪朝した韓国特使団に「軍事的脅威が解消し体制の安全が保証されれば核を持つ理由はない」と伝えた。また、国際的な孤立から脱却して制裁も解除されることも条件だ(日経新聞)。

正恩氏が3月26日に中国の習近平国家主席と会談したときも、「米国が我々の体制を確実に保証し、核放棄に伴う全面的な補償を受けることができるならば、核を完全に放棄することができる」と述べたと外交筋が4月7日に明らかにした(読売新聞同上)。

また、手順については、3月25〜28日の訪中時に、正恩氏は習氏に「段階的で同時的な措置をとるなら半島の非核化問題は解決できる」と述べたと中国外務省が発表している。段階を踏むごとに制裁の解除や経済支援といった見返りをひとつひとつ求めていくという意味のようだ(日経新聞同上)。

(3)米国が考える非核化の条件と手順

一方、米国は、核を廃棄する前には、制裁解除や経済支援は認めないという姿勢だ。体制保証もしないだろう。完全で検証可能かつ不可逆的な核放棄(CVID)を確認してはじめて経済制裁を解除し、国交正常化につなげるという手順という。

核廃棄の手順は、①まず核実験を「凍結」、②次にすべての核施設や核計画をIAEAに「申告」し、その活動を「停止」する、③施設を「解体」して核関連物資を「廃棄」する、④後戻りできないかどうかの「検証」を実施すると見られる。

米国が主導した2003〜04年のリビアの非核化では、カダフィ大佐が米英両国との秘密交渉を経て、核を含む大量破壊兵器の放棄を宣言。ただちに国際原子力機関(IAEA)の核査察が入り、2年半かけて米国と国交を樹立した(NHK)。安全保障担当の大統領補佐官に就任したボルトン氏は北朝鮮に関し「リビア方式」による非核化を唱えている。

こうした報道を見る限り、非核化についての米朝間の隔たりは大きい。2カ月程度の事前の外交交渉で修正可能なギャップなのだろうか。せいぜい大枠しか決められないように思えるのだが。
非核化については、交渉の進展に伴いブラッシュアップしたものをまたまとめたい。

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