中国、南シナ海での軍事行動の準備整う

米朝首脳会談への動きに気を奪われている間に、南シナ海では中国が着々と軍事拠点の強化を進めている。

5月18日に中国人民解放軍は、核の搭載が可能な「H6K」を含め、複数の爆撃機の離着陸を成功させたと発表した。

どこの島で行ったのかは明らかにしなかったが、西沙諸島(パラセル諸島)で最大の島(と言っても、2.1平方㎞)、ウッディアイランドとみられている。ベトナム、台湾も領有権を主張している島だ。(爆撃機着陸の動画を載せた「人民日報」のツイート)

今回の着陸訓練について、「ウォールストリート・ジャーナル」は、「世界の関心が北朝鮮問題に集中している間に、行われた軍事的な一連の動き」と見ている。

「一連の動き」とは、最近、フィリピン沖の南沙諸島(スプラトリー諸島)にある複数の軍事基地に、対艦巡航ミサイルと地対空ミサイルを中国軍が配備したからだ。

そのニュースが流れたのは日本が大型連休の最中だったから、ほとんどの人が気づかなかっただろう。私も調べていて知った。検索にヒットしたのは、ロイター、AFPで、日本のメディアはヒットしなかった。なお、西沙諸島には、すでに対艦ミサイルが配備済みだ(注)。

さらに、衛星写真によると、ここ数カ月の間に、西沙、南沙にレーダー、通信妨害施設を設置、中国軍の艦船と軍用機がひんぱんに訪れているという。

新しい米太平洋軍司令官となったフィリップ・デービッドソンは、4月に上院の委員会で、中国は南シナ海の軍事施設の建設をほぼ完成させており、「いまや戦争までには至らないシナリオならば、アメリカと渡り合って南シナ海をコントロールする能力を有している」と述べたという(WSJ)。 北朝鮮の核ミサイル問題がどういう形で結末を迎えるかはまだ見えていないが、仮に核廃棄が無事に実現したとしても、その先に待っているのは、南シナ海、さらには太平洋での米中の衝突だ。中国は、南シナ海を「核心的利益」と位置づけており、これを手放すシナリオはゼロと考えていいだろう。

アメリカとの間で軍事的緊張の高まりが予想されるが、アメリカはどう対応するのだろう。紛争も辞さないのか、それとも習近平国家主席がかつてオバマ大統領に提案した、「米中で太平洋を二分」する方向に動くのだろうか。日本は、平和と繁栄を維持し続けていく路線に知恵を絞らねばならない。

(注)西沙諸島には、すでに地対艦ミサイルが配備されていることを2年前に米国防総省のデンマーク副次官補が下院公聴会で証言している。この共同電は、西沙諸島と特定していないが、記事中に出てくる、IHSジェーンズの分析(日経新聞)は西沙を指している。

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