2000億ドル関税への報復、なぜ遅れている(年表付き)

米中貿易紛争は、米国が7月10日に中国製品2000億ドル分の追加関税品目リストを発表した後、中国側がどんな具体的な反応を打ち出すかを注視する段階にある。その反応次第で、紛争がさらにエスカレートするかどうかの大雑把なメドが見えてくるかもしれな。

今年3月に本格化した米中貿易紛争(表)は、双方の応酬が錯綜してわかりにくくなってきたので、2000億ドルの追加関税の出所をたどってみた。まず、米国が500億ドル相当の対中追加関税を6月15日に発表したのに対し、翌16日、中国が同等規模の報復措置を明らかにし、これにトランプ大統領が新たな対抗措置として、6月18日に米通商代表部(USTR)に品目リスト案の作成を指示していた。

米中貿易紛争の経過
2017年
8.14 トランプ米大統領が中国の技術移転策や知的財産権の侵害に対し、
1974年通商法301条に基づいた調査の実施検討を指示する大統領覚書に署名

8.18 米通商代表部(USTR)、調査開始決定
2018年
3.22 トランプ大統領、1974年通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を命じる大統領覚書に署名
4.3 USTR、中国への追加関税対象品目リスト(約1300品目、500億ドル相当)を発表
4.5 中国の対抗措置発表を受け、さらに500億ドル上乗せをUSTRに指示
4.16 米商務省、中国通訊(ZTE)がイラン、北朝鮮への経済制裁に違反し
たとして、輸出特権を否認したと発表
5.19 米国と中国政府が通商摩擦の解消に向けた共同声明を発表
5.29 中国への追加関税対象品目の最終リストを6月15日に公表と発表
追加関税実施保留を撤回
6.15 トランプ大統領が中国からの500億ドル相当の製品に25%の追加関
税を7月6日から実施することを明らかに
6.16 中国国務院、500億ドル相当の米国産農産物、自動車などに25%の
追加関税かけると発表
6.18 トランプ大統領が中国の16日の報復措置への新たな対抗措置として
追加の2000億ドル分の関税リスト作成をUSTRに指示
7.6 米国が中国からの輸入品340億ドル相当に対して25%の追加関税を
実施 中国も同等規模の対抗措置を実施
7.10 米国が2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を適用する方
針を明らかに 対象品目リストを公表
7.12 中国商務部が2000億ドル追加関税方針に反論声明
(出所)ジェトロ、各種報道

1974年通商法301条に基づく措置で、リストには、工業品のほかこれまで対象になっていなかった家具や食料品、飲料品などの消費財など6031品目が挙げられている。  今後、このリスト案に対する書面でのパブリックコメント提出(8月17日まで)、公聴会(8月20~23日)、公聴会での証言に対する反論提出(30日まで)といった修正受け入れの日程を経て最終品目が確定する(ジェトロビジネス短信)。

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関税以外の報復を模索か

これに対し、中国は、12日に商務部が長文の反論声明を発表したが、具体的な報復措置はまだ出ていない。

中国の具体的対応が遅れている理由のひとつに報復措置を模索しているからという見方がある。というのは、中国の米国からの輸入額は1298億9000万ドルと2000億ドルをかなり下回っており、報復として米国と同じ規模で輸入関税を課すことができないからだ。

このため、①米国製品の輸入検査の厳格化、②米企業の絡むM&A案件を阻止、③人民元安に誘導し、米国製品を割高にする、④米国債の売却などをロイターは推測している。①、②あたりならば、それほど影響度の大きい報復措置ではないが、③、④になれば、米中双方がダメージを受ける可能性があり、中国政府もそこまで踏み込むとは考えにくい。

もうひとつの理由は、中国が、米国にどう対応するべきか決めかねているのではないかという見方だ。それに関連して、習近平体制が今回の米中貿易紛争に対し対応を誤って、国内経済を危うくしているとの批判が高まっているとの報道が出始めている(産経新聞)。

12日の商務部声明は、「中国政府は再三、「戦いを望まないが恐れもしない、必要時には戦わざるを得ない」との原則的な立場を表明してきた。」と述べている(現代ビジネス=『週刊現代』の近藤大介さんが訳してくれています)。この言葉を掛け値なしに受け取れば、それなりの報復措置を打ち出してくるはずだ。何らかの兆しがわかる報道、分析を見つけたら伝えていきたい。

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