「偉大なる中華民族復興」の旗は控えめに 習主席

トランプ大統領の2000億ドル関税攻勢に対抗措置を打ち出さない中国。対米関係を悪化させた責任を習近平国家主席に問う不協和音の報道が出始めているというこの時期、習主席の動向を調べたら、アフリカ訪問中だった。

帰国は月末になるようで、8月初めとされる共産党首脳、長老が集まる北戴河会議がすぐに始まる。米国に何らかの具体的措置を打ち出すのは、そのあとになるのだろうか。それとも、アフリカから帰国するや電光石火に対応するのか。

習主席は、7月19日に北京を発ち、24日までアラブ首長国連邦(UAE)、アフリカのセネガル、ルワンダ、南アフリカの4カ国を国賓として訪問した。

きょう25日は、南アフリカのヨハネスブルグで開かれる第10回新興5カ国(BRICS)首脳会議にプーチン露大統領、モディ印首相らとともに出席する(時事通信)。

27、28両日にモーリシャスに立ち寄り、友好訪問を行う予定。モーリシャスは、アフリカ大陸の東にあるマダガスカルのそのまた東のインド洋にポツンと浮かぶ小さな島国。忙しい習主席の訪問国として、それほど優先順位が高い国には見えないのだが、「「⼀帯⼀路」建設において中国とアフリカを結ぶ懸け橋、紐帯となることを望んでいる」国なのだそうだ(人民網日本語版)。軍事的に重要な位置にあるとか、ひょっとすると何らかの意味合いがあるのかもしれないが、レクリエーションなんだろう。

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北戴河で対米戦略を再検討

帰国してから、日程は明らかにされていないが北戴河会議に臨む。北戴河は、渤海湾に面した中国河北省の保養地で、毎年7月下旬から8月最初の週にかけて、共産党の指導部や長老らが避暑を兼ねて集まる。その場で、重要問題が話し合われてきた言われるが、次第に影響力は低下し、とりわけ習体制下では、重要度は落ちている。

しかし、今回の北戴河会議は、「習主席にとって現在の政策を再検討し調整する良い機会かもしれない」と香港の日刊紙『South China Morning Post』は伝える。同紙の記事は、消息筋の話も交えながら、北戴河会議の後、米中、対トランプ関係の戦略を調整する可能性を伝えている。

7月6日に米中が互いに340億ドル相当の輸入品に追加関税を実施したとき、政府中央は「経済史上、最大の出来事(the biggest in economic history)」と称したといい、中国指導部に米中、対トランプ関係の戦略の再考を促したという。

それ以降、政府中央は、習主席が掲げる「偉大なる中華民族の復興」の旗印の下、6年間にわたり盛り上がっていたナショナリズムを鎮めようと模索してきた。

また、5月に劉鶴副首相が米国との和解交渉に失敗した後、ナショナリズムをトーンダウンさせるよう幹部たちに明確な指示を与えていると観測筋の話として伝えている。

劉鶴副首相の交渉については、12日に発表された中国商務部声明でも、次のように米国を強くなじっている。

「5月19日には、「中米共同声明」を発表した。すなわち双方の経済貿易の協力を強化し、貿易戦争は行わないという重要なコンセンサスに達したのだ。
それにもかかわらずアメリカは、国内政治の需要から、これをあろうことかひっくり返して反故にし、公然と双方のコンセンサスに背いて、中国との貿易戦争に打って出ることを堅持したのだ。」(現代ビジネス=『週刊現代』の近藤大介さんの訳です)

習主席らにとっても、米国の態度は予想外の動きだったのだろう。
果たして、北戴河会議の後、中国は、「偉大なる中国」を印象付けない対米外交を打ち出してくるのか。

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