大和総研VS IMF② 貿易紛争「心理的ショック」はさじ加減 

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IMFが貿易紛争の悪影響度を大きく見積もる理由は、ひとつには貿易価格の上昇率をどう予想するかにあった(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

もうひとつは、貿易紛争に対する「心理的ショック」をどの程度見積もるか、である。数値化が難しそうだが、人間は、常に合理的に行動するわけではないので、無視できない要因だ。数十年前だったら、主流派経済学から一笑に付された問題だろうが、いまや行動経済学の研究にノーベル賞が授与され、経済学も個人の主観的な行動を重視する時代だから、当然、考慮に入れねばならない要因だろう。

前回に紹介した大和総研のレポートは、IMFが7月18日付けで公表した“G-20 SURVEILLANCE NOTE”の試算結果を示している。20日から始まったブエノサイレスG20財務相・中央銀行総裁会議向けに提出されたレポートだ。

このIMFレポートでは、試算の前提となる貿易価格の上昇率を現実的な水準に設定したせいか「世界GDPの押し下げ幅は▲0.1%」という数字を出している。

しかも、関税引き上げの範囲は、鉄鋼・アルミニウム関税、米中間のまだ実施されていない分も含めた2500億ドル規模の関税、それに、発動を検討中の自動車関税に各国の報復も算入するという、いま論議されているものすべてを網羅したものだ。

これだけ網羅しても▲0.1%なのだから、世界経済を揺るがす要因にはなりそうもない。

ただ、メディア等で引用される数字は、この▲0.1%よりも、「世界のGDPを▲0.5%押し下げる」という▲0.5%の方が多いようだ(ロイター

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 「コンフィデンスショック」

大和総研のレポートによると、▲0.5%という試算結果には、「コンフィデンスショック」という要因が加えられているという。これは、「貿易戦争のリスクが高まることで、企業および家計がリスクプレミアムを従来よりも高く見積もり、このことが投資・消費を抑制する」というものだ。

確かに、貿易紛争の行方が不透明なので、企業が投資を抑制する動きは報告されている。経済系の国際会議や国際機関の声明、レポートには、たいてい末尾の方に、保護主義が世界経済に及ぼす悪影響が記されている。

スムーズに流れているサプライチェーンを高関税が混乱させる懸念も指摘されている。チェーンが国際化され、複雑化して、把握しきれないので、誰も「そんな混乱は起きない」と否定できない。知が追い付かない複雑な現実が不安を増幅させている。

ただ、そうした将来への不安を数値化するのは難しい。IMFは、人間の心の働きであるこのコンフィデンスショックを数値化するに際して、「リスクプレミアムの0.3%上昇」を見込んでいるというが、なぜ、「リスクプレミアム」の算出方法については言及されていないそうだ。

大和総研のレポートは、「果たしてそこまで心理的ショックが発生しうるか」と疑念を呈している。結局、「さじ加減」で最後に出される数字は決まる。ニュースを読む者にとっては、「さじ加減」の程度がわかるまでは、心の中で「保留」のニュースにしておいた方がいいのだろう。

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