8月12日週の政経予定 トルコリラ急落は他の新興国への投資チャンス(WSJ)

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8月12日週の政経日程

8月12日~
12日(日) 日航機墜落事故から33年/日中平和友好条約40周年
15(水) 終戦記念日
7日(火) 6月の家計調査/6月の毎月勤労統計調査
(出所)時事通信、ジェトロ

8月12日週は、日本は盆休みに入り、経済活動はひと息つくが、海外では、金曜日にダウ株価を200ドル近く下落させたトルコリラの動きが注目される。

トルコリラは10日の取引で、一時24%下落した。インフレの高まりと新興国で最も大幅な経常赤字の中にあるトルコは、年初来40%超値下がりしている。10日の急落は、トランプ米大統領が、トルコに対するアルミ・鉄鋼関税引き上げを表明したことが引き金になった(ロイター)。
(トランプ大統領がトルコを攻撃しているのは、トルコ在住の米国人牧師が2016年のクーデター未遂に関与したとして拘束されていることへの抗議だ)

愛国心への訴えが逆効果

トルコ政府は、急落を阻止しようと、エルドアン大統領が演説したが、逆効果になったと日経新聞はこう伝えている。
「エルドアン大統領は「枕の下のドル、ユーロ、金をリラに両替してほしい」と国民に訴え、「これは国難だ。(両替は)経済戦争を布告した者への最良の反撃となる」と対米強硬姿勢を改めて示した。この発言を受け、外為市場ではリラ売りが再加速した。」

愛国心に訴えたつもりだったのだろうが、この言い方では、政府には打つ手がないので、国民に助けを求めているように見えてしまう。

大統領の女婿で経済政策を統括するアルバイラク財務相が新た有効で、トルコ中央銀行は経済計画を公表したが、具体策や実現性への疑念から市場の反応は冷淡で、トルコ下落にさほど歯止めはかからなかった(ロイター)。

通貨安への対抗策としては、政策金利の引き上げが有効だ。トルコ中央銀行は、インフレ抑制の狙いもあり、すでに4月から6月までの間に3回利上げし、政策金利は年17.75%の高さにあるが、物価上昇率は16%近いので、利上げの余地はあるとみられている。

しかし、エルドアン大統領は景気減速を懸念して利上げの動きに公然と反対しており、中央銀行は利上げしにくい状況にある(日経新聞)。

米国で利上げが進む中でのトルコリラ急落ショック。新興国市場への波及が心配されているが、ウォールストリート・ジャーナルの人気コラム「ハード・オ・ザ・ストリート」は、楽観している。

「トルコの問題は新興国市場に広範な危機を引き起こすほどの規模ではない。実際、トルコの混乱を尻目に、全般的には安定の兆しが見え始めている。米国の成長加速とドル高という大きな変化に市場が適応してきたためだ。」

「トルコリラは10日欧州時間午後の取引でドルに対し前日比約14%下落し、過去1年では45%下落したが、ブラジルレアルやメキシコペソ、インドルピーは下げ渋っている。新興国資産の相場は7月の安値から持ち直しつつある。国際金融協会(IIF)によると、7月には新興国の株式と債券に計119億ドル(約1兆3000億円)の資金が流入し、1060億ドルの資金が流出した6月から反転した。」

「トルコはいずれ市場の懸念に対応せざるを得なくなる。そうなれば、トルコほどの難題に直面していない国々の株式・債券・通貨には買いの好機が訪れる可能性がある。」

トルコの混乱は続くが、それは、他の新興国への投資チャンスと見ているわけだ。