テスラ非上場化 サウジが資金源か

空売り勢力に苛立ったイーロン・マスク氏が打ち出したテスラ非上場化は、資金面では実現可能との見方を伝えたが(Kobaちゃんの硬派ニュース)、否定的な意見も当然あり、資金調達は困難で、「非上場化の可能性は極めて低い」との見方もある。

ブルームバーグはテスラに厳しい。
”ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ジョエル・レビントン氏は、株式非公開化の可能性は「極めて低い」とした上で、「フリーキャッシュフローが赤字の事業にとって500億ドル余りを調達するのは、異例とは言わないまでも難しいだろう」と指摘した”

たとえ、非上場化が実現しても、今後、中国での工場建設などで巨額資金の欠かせないテスラにとって、その実現が必要資金の調達に支障をきたすとの指摘も出ている。

テスラは2010年の上場以降、増資により約40億ドル(約4400億円)、社債発行を通じて130億ドル以上を調達してきた。

こうした巨額資金を容易に確保できたのは、マスク氏個人の知名度と宣伝力、それにテスラを敬愛するファンのお陰だったという。そして、市場で調達した資金がテスラにこれまでの成功をもたらした。

しかし、非上場化によって、資金調達の道が閉ざされてしまう。ジェフリーズのアナリストは「テスラは良好な市場環境と異常に低い資本コストから大きな恩恵を受けてきた。非公開化ならこうした追い風は続かないだろう」と指摘する(ウォールストリート・ジャーナル)。

ウォールストリート・ジャーナルの記事は、もうひとつの懸念を挙げる。非上場のための自社株買い資金を借り入れれば、財務状況が一層悪化するリスクである。
「バークレイズのアナリスト、ブライアン・ジョンソン氏の試算によると、テスラが非公開化の原資として借り入れで400億ドルを調達する場合、毎年27億ドルの利払いが必要になる。テスラの手元資金は6⽉末時点で22億ドル程度にとどまっており、また今後1年間に20億ドルの債務が返済期限を迎える」。

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資産家にキレないのか

一方、マスク氏が「戦略投資家」を味方につけるので、必要な資金は調達できると予想するアナリストもいる。戦略投資家とは、ここ数カ月にテスラ株を買い増したサウジアラビアの政府系ファンドなどを念頭に置いているのだろう。

そう推測していたら、やはりそうだった。マスク氏は13日のツイートでサウジが資金源であることを明らかにした。
”「7月31日の会合では、サウジのソブリンファンドとの取引がまとまると確信した。後はプロセスを先に進めるだけだと思った」とし、「8月7日の発表で『資金源は確保した』と言ったのはこのためだ」とした”(ウォールストリート・ジャーナル)。

実は、マスク氏はソフトバンクグループの孫正義氏と昨年、テスラへの投資について協議し、テスラの株式非公開化を含む選択肢を話し合っていたそうだ(ブルームバーグ)。協議は、テスラの非公開化の可能性にも及んだが、経営権を巡る意見の不一致があり、進展しなかったという。

マスク氏は多議決権株式(1株当たりの議決権が普通株式よりも多く割り当てられている株式)を通じてテスラを強力にコントロールする構造を提案していたというので、ソフトバンクのメガファンドから資金を導入しても、会社の支配権は手放さないつもりだったのだろう。

いまは、カラ売り勢力に苛立つマスク氏だが、非上場企業になり、巨額資金を得ようとすれば、今度は資産家たちとのタフな協議が待っている。「マスクさんのお好きなように使ってください」とマネーを投じるはずがない。最近の危なっかしい言動を見ていると、彼らとの話し合いにマスク氏がキレても不思議ではない。