史上最大のIPO サウジアラムコ上場中止のなぜ

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの上場中止決定に関するニュースを集めてみた。何しろ時価総額2兆ドル。現在、時価総額世界一のアップルが先日、1兆ドルを米企業として初めて突破したニュースが流れたが、その2倍の規模で、実現すれば、過去最大のIPO(新規株式上場)と言われていた。

上場計画は、国内改革を推し進め、敵も多いムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、2016年1月(当時は副皇太子)に公にしたもので、2兆ドルの5%、すなわち1000億ドル分の株式を市場で売り出そうという目論見だった。

ムハンマド皇太子は、調達した資金で、財政赤字を補うとともに、いずれは原油が尽きる時に備えて、脱石油依存に向けた経済多角化を進めるつもりだった。つまり、株式の世界でのスケールの大きい単なる上場エピソードという次元を超え、アラブの盟主・サウジの将来に関わってくる話でもあるのだ。

必要なくなったのか、失敗なのか

今回の上場中止については、経済環境の変化で、以前に比べ上場の必要性が薄れてきたための決定という見方と、改革の失敗であり、旗を振ったムハンマド皇太子の立場を危うくするという見方が出ている。

7月8日のウォールストリート・ジャーナルの記事は、前者の見方だ。今回の中止報道は、8月22日のロイター電だったが、上場準備のもたつきはメディアも察知しており、7月のウォールストリートの記事も見出しは、「アラムコIPO中止濃厚」となっている。
上場準備が遅れている理由について、記事はこう書いている。

「背景には、アラムコ幹部や外部のアドバイザーがここにきて、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子に対し、上場に伴う問題について強く助言していることがある。
ニューヨークやロンドン、香港など、世界の主要株式取引所に上場すれば、過度な法的リスクを背負うことになり、アラムコ株主が訴訟に巻き込まれるといった事態に陥る恐れがある、と政府当局者は認識するに至ったもようだ」

「またサウジの指導者らはIPOだけが収入を確保する手段だとはもはや考えていないという。
サルマン皇太子がIPO計画を発表して以降、原油価格はバレル当たり80ドル近くまで倍以上の水準に回復。イランやベネズエラ、リビアの産油量減少により、サウジは増産しても原油高の恩恵を享受できるという、またとない好運な状況にもある。サウジはまた、国債売却を通じて、海外の投資家から数十億ドルの調達も実現させた。」

原油価格も回復したし、法的リスクを冒してまで上場する必要はないとの判断に傾いたもので、失敗のにおいは感じ取れない。

しかし、この記事を書いたSummer Said記者が7月27日に、サウジ政府が、上場であてにしていた資金が得られないので、アラムコに借金をするよう圧力をかけているという記事を書いている。政府が資金を必要としているのは間違いない。

一方、上場したかったが失敗したのだという見方は、時事通信の8月24日の記事がそうだ。

「若き実力者ムハンマド皇太子(32)が主導して進められてきた改革に暗雲が垂れ込めている。」と改革そのものに支障をきたすとみて、次のように展開する。
「調達する推計約1000億ドル(11兆円)を原資に、幅広い分野の変革を推進する算段だった。IPOを取りやめとなれば、政府が描く計算に狂いが生じ、改革機運の後退を招く恐れがある。」

ロイターのコラムもすでに7月11日に、「皇太子の目論見は潰え去る。上場計画が立ち消えになった場合、サウジが受ける打撃は短期的な財政面のマイナスだけにはとどまらないだろう。」と上場中止を懸念していた。

いまのサウジは、ムハンマド皇太子を軸に動いている。上場中止が皇太子の改革にどう影響するのかを示す記事や論文が見つかれば、紹介していく。

ムハンマド皇太子については、JUGEMブログを使っていた昨年12月8日10日にも書いているので、そちらもご参照ください。

なお、サウジ政府は、ロイター電に対し、ファリハ・エネルギー産業鉱物資源相が「政府は引き続きアラムコの新規株式公開(IPO)に力を注ぐ」との声明を発表、報道を否定している(時事通信)。

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