トランプ弾劾に水をさすリベラル論客の真意  

先日、トランプ大統領の弾劾-罷免の可能性について、かなり現実性に乏しいとの原稿を書いた(Kobaちゃんの硬派ニュース)。それを読んでくださった知人のKさんが、ロバート・ライシュ氏も、自身のブログに同じテーマの小論を書いていることを教えてくれた。

ライシュ氏と言えば、民主党クリントン政権で労働長官を務めたリベラルな労働経済学者。民主党の中でも思想的にど真ん中の位置にいる人だろう。

その著書は、『勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来』、
『暴走する資本主義』、『最後の資本主義』など何冊も邦訳されており、日本でもよく知られている学者だ。いまは、カリフォルニア大学バークレー校の教授(Chancellor’s Professor of Public Policy)を務めている。

民主党リベラルのそのライシュ教授が書いた小論だから、トランプ大統領を毛嫌いしている気持ちが伝わってくるし、トランプ政権を倒したい思いが詰まっている。しかし、弾劾に頼っても政権は倒せないと明言するのだ。

以下、補足も加えて、ライシュ教授の小論「トランプ弾劾では足りない、大統領職を無効にしてしまおう(Don’t Just Impeach Trump. Annul His Presidency)」を紹介しよう。

トランプ側近だったマイケル・コーエン氏らが司法取引で罪を認め始めたので、弾劾-罷免を期待する人たちは、彼ら側近たちの自白に加え、ロバート・ミュラー特別検察官が明らかにするトランプ氏の司法妨害やロシアとの共謀が白黒をつけてくれると考える。

11月の中間選挙で、民主党が下院で議席を回復し、弾劾を始める。その中で、違法行為の証拠があがれば、共和党上院もトランプ氏を罷免せざるを得なくなる--そんなシナリオが流布されているが、ライシュ教授は、一瞬たりともそのシナリオを信じたことがないという。

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弾劾-罷免はありえない

なぜなら、第一に、過去の歴史で上院は大統領弾劾に有罪を宣告したことがない。

第二に、民主党が11月の中間選挙で下院を制しても、上院は共和党がほぼ確実に支配権を握っている。

第三に、フォックスニュースや右寄りのメディアは、どんな証拠が出てきてもそれを捻じ曲げ、国民の35~40%--そのほとんど共和党支持者--は、トランプ氏が陰謀にはめられ無実の犠牲になっていると信じさせるだろう

最後に、トランプ氏はニクソン氏のように自ら辞めるようなことはしない。ウソをつき、弾劾を陰謀と非難するだろう。

一番ありうるシナリオは、まだ2年半、彼が大統領の座に居続けることだという。

加えて、たとえ彼が弾劾され罷免されても、大統領職はペンス氏に引き継がれ、いまわしい政権が続くことを心に止めておこう、と弾劾-罷免路線を徹底的に否定する。

代わりに、ライシュ教授が、トランプ政権を終焉させる唯一の道と書いているのは、トランプ政権そのものが合衆国憲法に反していることを証明し、大統領職の無効を宣言することだという。

「もし、万が一もし、トランプが2016年の大統領選挙でプーチンと共謀して不正を行った証拠をロバート・ミュラーが見つけたならば、言い換えれば、トランプ政権が合衆国憲法によって正統化されないならば、トランプに忠実な人も彼を見捨てざるを得ず、共和党ももう我慢できず、フォックスニュースも弾劾を要求せざるをえなくなる」

憲法にそぐわない政権は、弾劾は不十分で、そもそも大統領職は無効(annulment)であり、最高裁は、トランプ政権による法律や命令は無効と宣言することになる。ペンス副大統領の職も無効となるから、大統領職は、継承順位が2番目の下院議長が務めることになる--ライシュ教授はそこまで具体的に書いている。確かに論理的にはその通りだが、現実性となるとどうなんだろう。弾劾-罷免よりも可能性は低く、最終回の逆転満塁サヨナラホームランのように見えるが。

ライシュ教授は、トランプ氏のしたたかさは生半可ではないと考えているようだ。手ごわい相手だ。過去の常識が通用しない。だから、弾劾ムードに舞い上がって、中途半端な気持ちで攻撃しても勝てないことを反トランプ勢力に戒めているとでも解釈しておこうか。

バーニー・サンダースのように、民主党ど真ん中にはいないが、人気のある民主党はずれ派、非エスタブリッシュ派は、トランプ政権とどう闘おうとしているのか調べてみたくなった。

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