グーグル 検閲受け入れて中国再参入か

グーグルが検索エンジンで中国に再参入しようとしている。社内でも秘密のプロジェクトを最初に伝えたのは米ネットメディアの「The Intercept」だ。中国のネット検閲を受け入れることになるので、失望や批判がグーグルに向けられている。

記事を流したのは8月1日夕方で、ウォールストリート・ジャーナル、ロイターはじめ日本の新聞もこれを追った。もう2カ月以上前の記事だが、改めて、その内容を紹介しよう(「」内は記事からの引用)。

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昨年から着々と準備

記事は、グーグルの内部文書と匿名の情報源(社員なのだろう)に基づいている。
「グーグルが、中国で検閲を強化した検索エンジンを使うことを計画している。それは、人権、デモクラシー、宗教、平和的抵抗といった言葉を見つけ、ウェブサイトをブラックリスト化する」

「すでに中国政府には提示されており、承認待ちで、最終バージョンが今後6カ月から9カ月の間に出される」

このプロジェクトは「ドラゴンフライ(とんぼ)」と名付けられているが、「それを知っているのは、グーグルの中でも2、300人」だという。

ドラゴンフライは、2017年春から始まった。12月には、CEOのピチャイが、中国へ飛んで、王滬寧(おう・こねい Wang Huning)とプライベートな会談を持った。王は中国共産党常務委員で、党内序列5位。習近平総書記の外交アドバイザーで、中国のキッシンジャーと呼ばれている男だ。同じ月にグーグルは、北京にAI研究所を開設することを発表した。着々と再参入の環境を整えていったようだ。

2010年に撤退

グーグルは、実は2006年から2010年の間、中国で検索エンジンの検閲バージョンを使ってビジネスを展開していた。中国政府の政策に従っていることから米国内で厳しい批判を受け、議会公聴会では、下院国際関係員会では、「中国政府の役人」「嫌悪すべき行為」とさんざんに非難され、共和党のクリス・スミス(Chris Smith)議員からは、グーグルの有名な社是、「”邪悪になるな (‘don’t be evil’)”を捨てて、”悪の仲間になった”」と言われた。

グーグルは結局、2010年3月に、検索サービスを中国から撤退することを発表した。グーグルは、自由な言論の制限、ウェブサイトのブロック、グーグルのコンピュータシステムへのハッキングなどを撤退理由にあげた。

中国政府はその後も、ネット検閲をますます強化してきた。その窮屈さは、たとえば、「中国のSNSである微博(ウェイボー)では、独裁的な政府を批判的に描いたジョージ・オーウェルの『1984年』や『動物農場』に言及するのは禁止されているし、西側で人気のあるインスタグラムやフェイスブック、ツイッターのようなSNSも政府が検閲している」

巨大ネット市場の魅力

にもかかわらず、グーグルが検索ビジネスで再参入を図ろうとしているのは、巨大な中国ネット市場の魅力である。「中国はいま、ヨーロッパの人口に匹敵する7億5000万人以上のネットユーザーを持っている。潜在的に巨額の売り上げをもたらす」

また、グーグルが撤退して以来、「グーグルのリーダーシップが
大きく変わった。共同創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジは役員だが、役割を小さくしている」
「再参入は現在のCEOのピチャイが主導している。彼は、46歳のインド系アメリカ人で2015年から経営の舵を取っている」。

ピチャイはこう言っているそうだ。「地球のすみずみのユーザーにサービスを提供する。グーグルは皆のためにある」「われわれは中国で、中国のユーザーにサービスを提供したい」
彼の中では、結論は決まっているようだ。

次回は、議会の懸念や社員の反対などを紹介しよう。

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