下院選挙はトランプ弾劾のイエス、ノーを問う選挙

きょうも米中間選挙を取り上げる。11月6日の投票で、民主党が過半数を制すれば、トランプ大統領に対する弾劾訴追が可能になる。

しかし、民主党は、中間選挙が終わるまでは、弾劾についての発言はご法度になっている。党指導部は、進歩派の議員や候補が弾劾を争点にすることを繰り返し戒めている。

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弾劾訴追を争点にしない民主党

8月にトランプ大統領の顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏が選挙資金違反の罪状を認め、トランプ氏の関与をほのめかして、弾劾熱が高まった時も、民主党の幹部、ナンシー・ペロシ下院院内総務は、トランプ大統領弾劾は、民主党員にとって優先するものではないと語り、11月に下院で勝利したとしても、民主党はモラー特別検察官が彼の仕事を終えられるよう監視することにあると語った(AP)。

民主党の上院院内幹事、ディック・ダービン議員も、大統領弾劾の議論は「時期尚早」だと言う。「より多くの情報が出てくる必要がある」ため、「まだそうした言葉を使う段階ではない」(ウォールストリート・ジャーナル、8月24日の記事)

民主党が、本来、政権への攻撃材料にみえる弾劾論議を意図的に避けるのは、「トランプ氏支持者を怒らせて投票所に足を運ばせる可能性がある上、無党派からも「政争にかまけている」との批判を招きかねない」からだという(時事通信)。

こうした政治戦術的な理由も、もちろんあるだろうが、それとは別に民主政治のモデル国家であるアメリカで、民意に支持された大統領を弾劾することへの政治家たちの躊躇も感じる。民主党の良識というか。想像しすぎだろうか。

だが、この時事の記事によると、ワシントン・ポスト紙などが8月末に発表した世論調査では、民主党が下院の多数派を制すればトランプ氏の弾劾に進むとみる人が72%に達したといい、有権者にとっては、下院選挙は弾劾訴追のイエス、ノーを問う選挙となっている。

ワシントンの政治の世界でも、「民主党が弾劾の論議を避けても、下院で勝てば、弾劾に進むことを疑わない者はほとんどいない」とニューヨーク・タイムズのホワイトハウス詰めの記者は書いている。

前出のウォールストリート・ジャーナルの記事は同紙の社説なのだが「民主党が11月の選挙で下院の過半数を獲得すれば、ほぼ確実にトランプ氏の弾劾手続きに入るだろう」と断言する。

この社説は、展開を次のように予測する。
「恐らく民主党はゆっくりと始め、まずは捜査手続きを活性化させるだろう。召喚状や公聴会、それら全てがメディアを通じて最大限に伝えられる。コーエン被告が主要な証人となり、司法取引で名前の挙がった他の人々も証言するはずだ」

しかし、いったんそこまで動き始めたら、民主党指導部の「ゆっくり」の思惑を超え、事態は進んでいくというのだ。ミュラー特別検察官が捜査内容を上司に報告するが、その内容は必ずメディアに漏れたりするからだ。

そして、社説は、トランプ大統領に「政治的な屈辱や法的な罰」を与えたがっているリベラル派の執念(あるいは怨念)を過小評価するべきではないと言って「われわれの話を信じないなら、ツイッターの投稿やコラムを読むといい」と勧めるのだ。相当に激しい言葉が飛び交っているのだろうか。この執念が弾劾訴追の強力なドライブとして働くようだ。良識の出る幕はなくなる。

大統領弾劾は、下院が検察の役となって訴追する。過半数の賛成があれば可能だ。裁判の役を担うのが上院で、罷免するには3分の2以上の議席が必要だ。中間選挙で改選される35議席を奪っても達しない数字で、罷免は共和党が賛成しない限り無理だ(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

しかし、訴追だけでも政権に与えるダメージは大きいだろうから、罷免は不可能でも民主党が訴追に踏み切るというわけだ。

下院選挙の結果は、大統領選挙の結果と同じくらいというと大げさかもしれないが、アメリカだけでなく世界にインパクトを与える度合いが大きい。

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