トランプ大統領、いまなぜINF条約破棄 ロシアだけでなく中国の脅威も視野に

中距離核戦力全廃条約(INF)を破棄すると表明したトランプ米大統領。冷戦時代を思い起こさせるような軍拡競争を繰り広げるつもりなのかと暗い気持ちになったが、いまなぜ条約破棄を言い出したのか。

トランプ大統領の20日の条約破棄発言は、突然飛び出したように見えたが、調べてみると、昨年米国はロシアに対し地上発射巡航ミサイルが条約違反であると非難、ロシアはこれを否定して、論争になっていたのだ(The Guardian)。

この問題にからんで、10月初め、米国のNATO大使、ケイ・ハチソン(Kay Bailey Hutchison)氏の”ロシアへの先制攻撃”発言が物議をかもしていた。

ハチソン大使は、条約に違反するロシアが新型巡航ミサイルの開発を中止せず配備されるようになったら、米国はロシアのミサイルを取り出す(take out)と、先制攻撃の可能性を示唆したのだ。「take out」は「奪い取る」といった意味が込められているのだろう。

奪い取ってしまう能力が米軍にあることを誇示したのか、あるいは、奪い取る作戦が立案されていることをにおわせたのか、あまりに挑戦的な言い回しに、Guardianの記事は「ロシアに対して先制攻撃の脅しをかけたのは、冷戦終了以降、前代未聞の発言」とあきれている。

そんな流れの中でのトランプ大統領の条約破棄発言だった。当然、ロシアに向けたメッセージではあり、NATOのストルテンベルグ事務総長は24日、「一方が守らない条約に効果はない。問題はロシアのふるまいにある」と米国の方針を支持する趣旨の発言をしている(NHK)。

だが、ロシアだけでなく条約の制約を受けずにミサイルを開発している中国の脅威もトランプ大統領の視野に入っていた。

ロイターはこう伝える。
「米国の当局者らは長年にわたり、INF廃棄条約が制約となり、中国による最新式の地上発射型ミサイル開発に匹敵する戦力増強ができない状況に危機感を示してきた。同条約は米国とロシアに中・短距離の核および通常型ミサイルの全廃を義務付ける内容となっている」。中国ミサイルに対する危機感はオバマ政権時代からあったという。

条約撤廃されれば、米中の軍拡競争に

INFが撤廃されたらどうなるのか-米中の軍拡競争に発展する恐れがある、日本の米軍基地にもミサイルが配備される、とこのロイターの記事は専門家の見方を紹介する。

「INF廃棄条約破棄によって米国は、グアムや日本に陸上移動式の(核弾頭を搭載していない)通常型ミサイルを配備する可能性があると指摘。そうなれば、中国はミサイル防衛の強化を余儀なくされ、軍拡競争に発展する恐れがあるとした。「現在の状況を根本から変えるだろう」と警告した。」元国防総省スタッフで、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンタル氏の見通しである。

米大統領補佐官のボルトン氏は、ロシアに渡り、22日からラブロフ外相、ショイグ国防相、プーチン大統領と会談し、条約破棄の方針を伝えた(日経新聞)が、米ロの主張は平行線をたどった。

訪ロ中のインタビューで、ボルトン補佐官は「ロシアと中国が条約に違反する兵器を全て廃棄すれば状況は別だが、それが実現する可能性はゼロだろう」と語った(産経新聞)。破棄を見直すつもりはもはやないらしい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする