北海道ブラックアウト検証委 再生エネルギーの積極活用には踏み込まず

9月6日の北海道地震がもたらした全域停電(ブラックアウト)を調査していた第三者検証委員会は、10月23日に中間報告を出した。北海道に豊富な再生可能エネルギーを再発防止策にどれだけ盛り込むか注目していたが、再生エネを積極的に取り入れる提言はなかった。

以前に書いた通り(Kobaちゃんの硬派ニュース)、北海道では、太陽光(97.3万kw)、風力(32.1万kw)、中小水力(83.3万kw)、廃棄物(24.3万kw)など合計で244.9万kwの新エネルギーが導入されている(2015年度)。地震時の北海道の電力需要の8割をカバーする規模だ。

今回のブラックアウトは、苫東厚真火力発電所(165万kw)に頼りすぎていたことが大きな原因だったので、再生エネをもっと活用することが当然視野に入ってくる。

毎日新聞も社説で「中長期的には風力など再生可能エネルギーも含め、電源の供給構造を分散型に転換していくべきだ」と訴えている。

しかし、中間報告を読んでみると、再生エネルギーの活用を訴えるような記述は見られなかった。風力と太陽光について言及しているのは、「北海道エリアにおける運用上の中長期対策」(67㌻以降)の個所だ。

電気は過剰に供給すると周波数が上昇し、供給が過小になると周波数が下降する。周波数が変動すると、電動機の回転数が変わるため、「産業用機器などの不安定動作、生産ラインの停止」などの不具合が発生するおそれがある(北海道電力HP)。このため電力会社は電気の流れを遮断して停電を強いる。

遮断に踏み切る際の基準として、最小周波数、最大周波数の数値をあらかじめ決めているが(注)、報告書は風力も太陽光もギリギリの数値を設定して、すぐに遮断することのないようにするべきと言っているようだ。報告書の該当部分は専門的でわかりにくい。こんな具合だ。

(注)北海道電力は、周波数50Hz(ヘルツ)地域だが、最小周波数を「48.5Hzで 0.1 秒から 21 秒」、「48.0Hzで 0.1 秒から 6 秒」の時限で遮断するよう設定されていた(報告書10㌻の3)。

「個別の風力発電機の UFR の整定値が運転限界周波数の下限に設定されているかどうか、-中略-を確認し、そうでない場合は、適切な対応を講じる必要があると考えられる。」(報告書69㌻)。

UFRとは制御装置のようなもので、周波数低下量と低下時間を変電所線路ごとにあらかじめ装置に設定しておき、それに従って自動的に線路を遮断するらしい。整定値も耳慣れない用語だが、英語では「set point」と言うようだ。つまり設定値と理解していいのだろう。

運転限界周波数は文字通り、発電所の運転が可能なギリギリの周波数ということだろう。制御装置がそのギリギリの数値に設定されている、つまり高めに設定されている場合は、適切な対応を講じる、つまりギリギリまで下げなさいということなのだろう。

とまあ、いちいち意訳していかないと意味が分からない文章なのだが、今後の対策の中に出てくる再生エネルギーのことはこれだけの内容である。要は「風力や太陽光のせいで周波数が変動しても可能な限り遮断しないようにしましょう」とまでは言うけれど、「風力や太陽光をもっと活用しましょう」とまでは言わない報告書である。

報告書は、ブラックアウトまでの経過や電力供給を回復させるまでの経過についてはとても丁寧にフォローしているのだが、対策については微修正レベルの提案しかなされていない。Kobaちゃんの意訳が正しければ、しょぼい。

電力会社、特にその電力運用部門にとって、再生エネなどの分散型電源は制御できないのでできれば遠慮願いたいというのが本音だろう。電気を安定的に供給したいという気持ちは理解できるが、再生エネを取り込もうとする積極的な姿を見たい。それとも、分散型電源を中央制御の発送電システムは水と油で、ないものねだりなのだろうか。