日本の選挙では考えられないことだが、6日の米中間選挙はまだ議席が確定していない。上院は2議席、下院は9議席、知事は1州がまだ集計中だ。すでに確定していたフロリダ州は票の再集計を始める始末(NHK)。もちろん大勢は決まっているので、これまで確定した上院、知事選の結果から、2年後の大統領選挙を見通してみた。どうもトランプ大統領の再選に黄信号が灯ったように見える。
2016年の大統領選挙における獲得選挙人数は、トランプ304、ヒラリー・クリントン227だった。総選挙人数は538人(末尾の注参照)で270人を獲得した候補者が大統領に選ばれる。
下の表は、その時の選挙で接戦だった州の今回の選挙結果だ。トランプ、ヒラリーの得票率の差が1%未満の大激戦州が①グループの4州で、赤字はトランプが勝った州、青字はヒラリーが勝った州だ。(中間選挙得票率はRealClearPoliticsの「Individual Race Results」より。接戦州はウィキペディアの「2016年アメリカ合衆国大統領選挙」の最後の方の「接戦だった州」より)
①グループ | 2016大統領選得票率差 | 同左 | 上院 | 知事 | |||
選挙人数 | 1%未満 | 差(%) | 共和 | 民主 | 共和 | 民主 | |
16 | ミシガン | 0.22 | 45.8 | 52.2 | 43.8 | 53.3 | |
4 | ニューハンプシャー | 0.37 | - | - | 52.8 | 45.8 | |
20 | ペンシルバニア | 0.72 | 42.7 | 55.6 | 40.8 | 57.7 | |
10 | ウィスコンシン | 0.76 | 44.6 | 55.4 | 48.4 | 49.6 | |
②グループ | 得票率差 | ||||||
選挙人数 | 1%以上5%未満 | 差(%) | |||||
29 | フロリダ | 1.20 | 50.1 | 49.9 | 49.6 | 49.2 | |
10 | ミネソタ | 1.52 | 36.2 | 60.3 | 42.4 | 53.9 | |
6 | ネバダ | 2.42 | 45.4 | 50.4 | 45.3 | 49.4 | |
2 | メイン | 2.96 | 35.3 | 54.4(独立) | 43.2 | 50.8 | |
11 | アリゾナ | 3.55 | 48.1 | 49.5 | 56.5 | 41.4 | |
15 | ノースカロライナ | 3.66 | - | - | - | - | |
9 | コロラド | 4.91 | - | - | 44 | 52.3 | |
③グループ | 得票率差 | ||||||
選挙人数 | 5%以上10%未満 | 差(%) | |||||
16 | ジョージア | 5.13 | - | - | 50.3 | 48.8 | |
13 | バージニア | 5.32 | 41.2 | 56.9 | - | - | |
18 | オハイオ | 8.13 | 46.8 | 53.2 | 50.7 | 46.4 | |
5 | ニューメキシコ | 8.21 | 30.6 | 54 | 42.9 | 57.1 | |
38 | テキサス | 9.00 | 50.9 | 48.3 | 55.8 | 42.5 | |
6 | アイオワ | 9.41 | - | - | 50.4 | 47.4 | |
(注)赤字は共和党勝利、青字は民主党勝利 。両方黒字は未決着。-は今回、選挙なし |
米大統領選は、有権者が各州で投票し、その州で1票でも多い候補者がその州の選挙人をすべて獲得する総取り方式(メイン州とネブラスカ州は多少違いがある)になっている。
前回大統領選で、もし、ヒラリーが43票獲得していれば270票に達して勝っていたことになる。その視点から改めて表を見ると、大激戦4州のうち、トランプが勝ったミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンの3州で民主党が上院も知事選も制しているのがわかる。それも接戦ではなく余裕のある勝ち方がほとんどだ。この3州の選挙人数を合わせると46人に達する。ヒラリーが勝ったニューハンプシャーは、今回は共和党が知事選で勝ったが選挙人は4人にすぎない。
この3州は、トランプ当選を後押しした地域で、日本でもその名を知られるようになった「ラストベルト」だ。選挙前の世論調査でも民主党優勢が伝えられていた(ロイター)。これまで投票に行かなかった有権者の票を民主党が掘り起こしたこともあろうが、トランプを支持した工場労働者がそっぽを向いたのではないか。
②グループでは、フロリダが大接戦で、上院、知事選とも再集計することになり、結果は「15日午後3時(2000GMT、日本時間16日午前5時)までに発表する」(ロイター)。
アリゾナは上院で民主党が少しリードしているがまだ決着していない。
③グループでは、テキサスが注目だ。大統領選挙人がカリフォルニア州の55人に次ぐ38人を数える大票田。共和党の大統領候補に出馬した実績もあり、安泰と思われていたテッド・クルーズが上院選で大苦戦して、宿敵だったトランプ大統領が応援演説に乗り込むほど。2.6%の差で民主党のベト・オルーク前連邦下院議員にようやく勝った。共和党牙城の州とも言われるが、民主党の支持基盤だった時期もあり、ヒスパニック系の人口も増えつつある。今回の僅差結果で民主党に引っくり返る目も出てきた。ラストベルトのオハイオでは、上院を民主党が取った。
こうした結果を見る限り、トランプ当選を支えた基盤が崩れている、黄信号が灯ったように見える。トランプ大統領も当初は、ツイートで「大成功」とつぶやいても、次第に気づき始めているのではないか。
(注)各州の選挙人は、その州の下院議員数+各州上院の議員数(2人)で、たとえばカリフォルニア州ならば、下院議員数は53人で上院2人を加え55人になる。つまり、全体では、下院総数435と上院100を合わせた535人だが、上下院に議席を持たない首都ワシントン(コロンビア特別区)には大統領選挙には3人の選挙人が認められているので、全体では538人になる。