米国はなぜ海外企業を制裁できるのか 法的根拠は?

米国がイランに対する制裁の第2弾を5日から再開した。8月の自動車部門などへの制裁再開に続くもので、今回は原油、金融などイラン経済の中核が対象となる。

ただし、イラン産原油については「中国とインド、韓国、トルコ、イタリア、日本、ギリシャ、台湾の8カ国・地域に関し、原油価格上昇を抑えるため適用除外にすると発表した。8カ国・地域は180日間をめどに一定量の輸入が認められた」(産経新聞)。

EU、英独仏はイランと取引継続を声明

適用除外されなかったEU(欧州連合)、仏独英の外務、財務大臣は共同で、イランとの原油・金融取引の継続を表明し、「イランと正当な取引を行う欧州の事業者を保護するつもりだ」と宣言している(駐日欧州連合代表部)。米国が欧州の事業者に制裁を実施すれば、米欧間の緊張が高まるだろう。

それにしても、国内で違法行為を犯したのなら海外企業でも罰則を適用するのは当たり前だけど、自国外での海外企業のビジネス活動までをもなぜ制裁できるのだろう。

国連制裁や条約による制裁ならば納得がいくが、今回の米国によるイラン制裁の根拠は米国の法律なのだから。根拠になっている法律は、2012年度国防授権法(NDAA)、イラン制裁法(ISA)、イラン脅威削減シリア人権法(TRA)、2013年度国防授権法の中に設けられたイラン制裁セクション(IFCA)などらしい(海外投融資情報財団)。

自国の法律を自国の領域を超えて他国に及ぼすことを域外適用と呼ぶ。もともと米国のお得意技で、①独禁法、租税法、②外国公務員贈賄規制、③米国の輸出管理法や安全保障がらみの法の分野に分類できる。①、②については国際的な合意がかなり進んでいるが、③がもめる元になる。

パリバには1兆円を超える罰金

金融界で強く記憶に残る制裁が、オバマ政権下の2014年6月30日、米司法省が、フランスの最大手銀行、BNPパリバに総額89億ドルの罰金を科したケースだ。いまの為替レートで1兆円を超える巨額の罰金だ。

理由は「パリバは米国が金融制裁の対象としたスーダンやイランとの間でドル送金などの金融取引を続け、その事実を隠していた。これらが米国法に違反すると認定した」(日経新聞)。これもイランがらみだった。

当時のオランド仏大統領がオバマ大統領にかけあったが、結局、パリバは89億ドルを支払うことで米司法省と和解した(AFP)。

国際取引にはドルが使われることが多い。原油取引にはドルが不可欠だ。そして、国際送金する際、米国内にある米国銀行のコルレス口座を経由するのが普通だそうだ(国際商取引学会報告10㌻)。パリバがイランと金融取引する場合も米国内を経由したのだろう。これが、米国法を適用できる根拠のひとつになっている(以降の記述は、久保田隆・早大教授のこの報告に拠る)。

しかし、久保田教授は「「米ドル・コルレス口座」は電子的な帳簿の付け替えにすぎず実体を伴わないし、これで属地主義に認定できるとすれば国際送金ネットワークであるSWIFTの所在国(ベルギー)や会計センターやバックアップセンターの所在国等が全て管轄権を有することになり、当事者の予測可能性を遥かに超えて国際取引秩序が混乱する」と根拠が薄弱としている(報告10㌻)。

かつては、米国法の域外適用に対抗立法を発動したり、国際法上の違法性を問うことが多かったが、近年は、異論を唱えることが少なくなったという。パリバのケースも結局、フランスが呑んだ。その理由について、久保田教授は、各国首脳や閣僚たちによる国際会議が頻繁に開かれるようになり、それらの場で形成されてきた「ソフトロー(法的拘束力のない申し合わせ)」が事実上の拘束力を発揮するメカニズムとして機能するようになったからではないかとみる(報告4㌻)。

米国は域外適用の根拠をはっきりさせてない(報告4㌻)。要するに覇権国家だからできるという面が強いようだ。近年になく、域外適用に真っ向から反対するEU、英独仏にトランプ政権は対立を深めるような対応をするのだろうか。

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