北朝鮮、ほど遠い「ミサイル施設解体」 CSIS報告書

「やはり隠していたか」と思った人も多かっただろう。北朝鮮のミサイル基地のことだ。12日に米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は、北朝鮮がこれまで公表していなかったミサイル基地13カ所を新たな民間衛星写真で確認したという報告書を発表した(CNN)。

ただ、最近になって新たに発見したものではないようだ。ニュースの見出しだけを見ているとそんな印象を持ってしまう。しかし、CNNニュースに転載された衛星写真をよく見ると、「March 29,2018」と半年以上も前の日付が記されている。報告書が13カ所のひとつとして挙げた南西部サッカンモルの写真だ。以前から視認されていた建物を分析したらミサイル施設と確認できたということなのだろう。

トランプ大統領も13日、ツイッターで「われわれは話題に上っている基地について完全に把握している」と未知のものではないとの投稿をした。CSISの報告書自体が「時折、”地下ミサイル貯蔵施設”と誤って伝えられていた」とその存在を書いているので、今回それが、貯蔵ではなく発射施設と判明したということらしい(報告書の冒頭「Sakkanmol Missile Operating Base」の節)。

報告書の意味あいは、新しいものの発見というよりも北朝鮮がミサイル施設を解体する意思がないことを改めて明らかにしたということだろう。

北朝鮮は今年5月、北東部にある豊渓里(プンゲリ)の核実験場を世界の記者団30人が見守るなかで爆破した。北朝鮮のミサイル、核施設が二、三カ所だけというのはありえないから、まだたくさんの施設が温存されているのは素人でもわかる。それをはっきりさせたのが、今回の報告書で、Washington Postは「報告書は、北朝鮮がミサイル発射テストを中止した一方で、ミサイル兵器を解体する気がないことを示す最新の証拠だ」と伝えている。

米朝交渉で、米側は北朝鮮国内のミサイル、核施設をすべてリストアップして提出するよう求めているが、北朝鮮は応じていない。
交渉に当たる金英哲朝鮮労働党副委員長は、豊渓里の核実験場を廃棄したのに米国はそれに見合った対応を示さないと不満を口にしている。

北朝鮮外務省は今月2日に、「制裁が続けば、経済建設と核開発を同時に進める政策を復活させる可能性がある」との声明を出し、
8日には、ニューヨークで予定されていた米朝高官会談が延期されるなど、交渉は行き詰まっているように見える。

その割には、トランプ大統領が妙に楽観的で、どんな着地点を描いているのか見えてこない。外交上の懸案事項は対中、対イランもある。中間選挙後、どこから手をつけるのか。

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