「電動車(EV)不要説」まで飛び出すトランプ政権の燃費規制緩和

世界はEV(電気自動車)など非エンジン車の時代へと一直線に進んでいるように見えるが「電動車の終わりの始まり」と評される動きが一方で起きている。

震源地は米国で、ちょっと古いニュースになるが、トランプ政権が8月2日に発表した自動車の燃費規制緩和案だ。GHG(温室効果ガス)、CAFE(企業平均燃費)ともに「2021~2026年の車両の規制値を、2020年の規制値で据え置く。実質的には、2020~2026年の規制値を緩和したのに等しい」(日経xTECH)。

具体的には、「現行基準では、2025年型車まで1ガロン当たりの走行距離が約50マイル(リッター換算21.1キロ)以上となるよう、年ごとに燃費改善目標を段階的に定めている。これに対し、今回の法案では、2021~2026年型車の基準値を、2020型車の目標値である37マイル(リッター換算15.6キロ)に据え置く」(ジェトロビジネス短信)。リッター15.6キロの性能を維持し、当分それ以上改善する必要がなくなる。

今回の規制緩和が実現すると、HEV(簡易式含む)の普及率は、2030年で3%にとどまると、米運輸省(DOT)と環境保護庁(EPA)は試算している。オバマ前政権時に決めた燃費規制の強化を続けると普及率56%の見通しだった(日経xTECH)というから、見えてくる将来の姿がかなり変わってくる。

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「EVバブルが弾ける」

目標達成にEVを必要としないし、エンジン車だけで達成可能となるこの状況に、自動車アナリストから「電動車両の終わりの始まりだ。米国にとどまらず、世界で盛り上がる「EV(電気自動車)バブル」も弾けるかもしれない」という見方も出ている(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・杉本浩一氏、日経xTECH

トランプ政権は、米政府が決る燃費規制を緩和することに加えて、カリフォルニア州独自のZEV(Zero Emission)規制の撤廃も提案している。

これに対し、カリフォルニア州など20州と複数の主要都市が燃費基準の緩和案を破棄するようトランプ政権に文書を提出した。「文書は、現政権の提案は「違法」で「無謀」であり、「気候変動対策に著しい打撃を与えることになる」と批判。当局が同案の施行を進めた場合は法的措置も辞さないとしている」(ロイター)。

規制緩和案についてのパブリックコメントの受付は10月26日に締め切られた。いまのところ「案」の段階で、実施についての最終判断は今冬を目指すがいつになるかは未定という。決定すれば、2021年モデル(2020年発売)の車両からの適用が始まる。

ただ、決定したとしても、2020年11月の次期大統領選挙で、「環境保護派が大統領となった場合は大きな影響が出る。「厳格な規制が再びスタートする。自動車メーカーは前倒しで規制対応を進めてクレジットを蓄積しておく必要に迫られる」」とアナリストは見る(日経xTECH)。

また、連邦政府が規制緩和してもカリフォルニア州の厳しい規制が残ることも想定され、そうなれば、自動車メーカーにとってはダブルスタンダードとなる(同上)。

2019年は電気自動車の未来を左右する年になるかもしれず、最終決定の動きに注目したい。