LINEが仕掛けるキャッシュレス  メガ銀行とは異なるビジネスモデル

遅まきながら、きょう初めてスマホの電子マネーを使ってみた。「ジョナサン」のランチ代をドコモの「iD」で支払った(Appel Payを使うつもりだったが、iDになった)。レジでスマホをかざすだけで、会計終わり。「完了」の文字とともに「ピーン」と聞こえた音が走者一掃の一打のように爽快だった。

それというのも、SNS大手のLINEがみずほフィナンシャルグループと組んで新銀行「LINEバンク」を設立することを発表したからだ。キャッシュレスについて知りたくなって、LINEをとっかかりに調べようと思ったのだ。まずは、今年に入ってからのLINEの金融事業への動きを整理してみた。一番下に時系列表を掲載した。

LINEが金融参入宣言したのは1月31日の2017年度決算発表時。2018年度に金融・AI領域に計300億円の投資を行うことを明らかにした。

金融ビジネスの当面の柱に据えるのは、2014年に始めた「LINE Pay」のようだ。銀行口座やコンビニからチャージできる電子マネーで、国内で使える店舗は9万4000店を数える。すでに4000万人が登録しており、LINEの「友だち」同士でお金のやりとりもできる(ITmedia)。

LINEはLINE Payの利用店舗を一気に増やすために今年、クレジットカードの老舗、JCBと手を組んだ。JCBの電子マネー「QUICPay」加盟店でもLINE Payを使えるようにしたのだ。この提携で72万カ所で利用可能になった(同上)。

JCBとの提携のような大きな網を仕掛ける一方で、小さな飲食店や商店に対して地道な拡大戦略を続けているようだが、その際、売りになるのが「初期投資ゼロ、手数料3年間ゼロ」。クレジットカード業界では、カード読み取り機の導入費用と売り上げの数%の手数料に誰も疑問に思わなかった。その常識をあっさりと打ち破ってしまった。ソフトバンク系の電子マネー「PayPay」も手数料をゼロを打ち出している。

公共料金も支払い可能にするなど、LINE Payの機能強化に励む一方で、QRコードで決済する端末の開発・販売会社にも出資し、決済方法も目立たぬが強化している。

そして、ついに銀行の設立を決めた。日経新聞の7月10日の記事は「既存の金融機関と提携せざるを得ない」と見通していた。JCBとの提携を例にあげたうえで「銀行口座を中抜きしたくても、給与など「振込口座」は事実上、銀行口座に限定されている」と説明している。スマホの電子マネーと銀行口座はコインの表と裏のようなものだろう。

しかし、既存の金融機関とLINEやソフトバンクのようなITからの参入組とはビジネスモデルが決定的に違うそうだ。銀行と系列のクレジットカード会社は加盟店からの手数料で稼ぐので、それなしに事業の存続は難しい。一方、LINEは前述したように、LINE Pay加盟の中小業者店舗から手数料を取らない。

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LINE Payはどこで稼ぐのか

では、LINEはどこで稼ぐのかというと、加盟店舗からの広告収入だという。元日銀審議委員の木内登英氏は、こう説明している。
「LINEペイの場合には、無料アプリを使って顧客の決済を行うと、店舗の公式アカウントがその顧客とLINE上で「友だち」になれるという特徴がある。店舗側はその後、キャンペーンやクーポン発行などのメッセージを顧客に届けられるようになるが、その際に広告収入がLINEに入る仕組みだ」。

「中国のアリババグループ傘下のアリペイも、決済サービスをほぼ無料で利用者に提供している。アリペイはそこから得られる取引履歴、つまり誰がいつどこで何を買ったか、などといった情報を蓄積し、それを自社のネットショッピングでのターゲット広告などに利用、または他社に販売することで稼ぐというビジネスモデルになっている」(東洋経済オンライン、2㌻目)。

LINEの思惑通りにマネタイズできるかどうか、結果は未知だが、その存在が、今後の金融業の在り方を大きく変えそうなことはわかった。さらに調べていきたい。

2018年のLINEの金融事業進出の歩み
1.31 金融事業関連の新会社「LINE Financial」の設立を発表。2018年度は金融・AI領域に
計300億円の投資を行うことを公表
3.6 スマホで公共料金などを支払えるサービスを始めると発表。まず、東京電力の電気料
金の請求書で開始。
4.11 QRコードで決済する端末の開発・販売会社、ネットスターズ(東京・中央)に出資した
と発表。
6.28 JCBと組み、2018年中に読み取り端末にスマホをかざして決済できるサービスを始め
ると発表。
「決済に革命を起こす。財布や現金がない世界の実現を目指す」とLINE Payの長福
久弘取締役COO(最高執行責任者)。
7.17 仮想通貨交換所「ビットボックス」の運営を本格的に開始と発表。ビットコインなど約30
種類を扱う。
8 神奈川県で8月からLINEペイで水道料金の支払い可能に。19年以降、自動車税など
税金の分野にも広げる。
10.3 飲食店で持ち帰り商品を事前に注文・決済できるサービスを2019年春に始めると発表。
11.27 みずほフィナンシャルグループと組んで新銀行「LINEバンク」を設立すると発表。2020年
業務開始目指す。
(出所)日経新聞、Techcrunch、ITmedia
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