「逆イールド」警報が鳴って、米国株800ドル安

4日のニューヨーク株式市場で、ダウが799ドル36セント(3.1%)の大幅安となったのは、米景気後退の接近、米中貿易摩擦への警戒感の再燃などが理由としてあげられている。

4日の東京市場で538円という大幅安の流れを受けたわけではなく、前日3日の米債券市場での11年ぶりの異変が景気後退の前兆と強く意識されたらしい(日経新聞)。

異変とは、3年債の利回りが5年債利回りを上回ったことだ。「逆イールド」と呼ぶ現象だ。2年債と10年債の利回り差も逆イールドに至っていないが、2007年7月以来の水準まで縮小した。

本来、金利は長期の利回りが短期の利回りを上回る。長くリスクを抱えることへのおまけだが、そのおまけが剥落する逆イールドが起きる時がある。凶事の前兆を探りたがるのは人の性で、逆イールドは景気後退の前兆の受け止められている。

過去には、1980年、1990年、2001年、2007年に発生し、その後11カ月~25カ月後に景気後退期が訪れている(第一生命経済研究所)。2001年と言えば、ITバブル崩壊、2007年はリーマン・ショックだから、その連想に引きずられたら投資家は警戒感を強める。

必ずし景気後退になるわけではない

ただ、逆イールド化が起きても景気回復が続き、その後、逆イールドが消えたケースもあるという。1966~1967年の時だ(野村総研)。さらに仔細に見ていくと、1989年1月から9月にかけて逆イールドとなりながら、その後、小さな調整局面はあったものの、株価の本格的な下落局面は実現しなかったという(現代ビジネス)。

また、「逆イールド化は景気回復の中盤頃に既に生じ、そこから景気後退入りまでに相当の時間を要したこともある。1977年、2005年の逆イールド化などが、その例に当てはまる」(野村同上)。

今回の長短逆転はいつごろから始まっていたかというと、FRB(連邦準備理事会)が2015年末から段階的に利上げを続け、長短金利の差が次第に縮まっていき、すでに今年春ごろに、市場関係者が逆イールドは「時間の問題」と発言していた(SankeiBiz=ブルームバーグ)。

それから半年以上が過ぎていよいよ現実化してきた。5日最新の米金利は、米国債2年の2.799%に対し5年は2.790%と長短逆転しているが、10年は2.915%とわずかだが短期を上回っている(ロイター)。

シンクタンクは、逆イールドという言葉を、長は10年国債、短は2年国債に着目して、その差を見て使っているようだ。だから、2年と10年が逆転していない場合は、プロから見ればまだ逆イールドとは言わないのかもしれないが、ほぼ逆イールド状況に入っている。

永遠の景気拡大なんてないから、関心の焦点は拡大終了の時期だ。足下の米経済は、7-9月期のGDPが年率3・5%、年末商戦もネット販売が好調で全体でも堅調のようだ(日経新聞)。失業率は3・7%と1969年以来の低水準。終了が間近には見えない。

しかし、90日間と期限を区切った米中貿易摩擦、メイ政権作成のブレグジット案に否決の予想が強い11日の英国議会、予算案を巡るイタリアとEUの対立など、株価上昇に強気になりにくい状況が目先にある。そこに着目した売り勢力が株安にかけたところ、逆イールド警報も共鳴して同調する投資家が増え、800ドル下落になったということだろうか。

18、19日には米政策金利を決める公開市場委員会(FOMC)が開かれる。今年4回目の利上げ決定が確実視されているが、そうなれば逆イールド達成必至。結果的に、売り勢力を支えることになる。いまの株高が行き過ぎていると考えるならば、それでもいいのだろうが、委員会のメンバーはどう判断を下すのか。委員会後のパウエルFRB議長の会見も注目される。

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