米中90日交渉 中国側の譲歩にトランプは満足するか

米中貿易紛争で中国側に投げかけたボールが返ってきた。自動車関税の引き下げやハイテク産業育成策「中国製造2025」の見直しを進めるなど、中国側が譲歩の姿勢を見せている。年明け以降に劉鶴副首相がワシントンを訪れるという。

ウォールストリート・ジャーナルによると、中国側の方針は、米国時間10日夜の電話会談で、劉副首相が米国のスティーブン・ムニューシン財務長官、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表に、米国からの輸入車に対する関税を40%から15%へ引き下げること、大豆などの穀物輸入拡大を計画していることを伝えた。実施時期は不明だ。

これまで、その方向で中国が検討しているとされていたが(Kobaちゃんの硬派ニュース)、今回の報道は電話協議の成果として伝えている。

また、交渉の難題である知的財産権については、「中国最高人民法院(最高裁)の顧問を務める呉漢東氏はWSJに対し11日、米国の懸念に対応することも念頭に、中国が特許法改正に向けた動きを加速させていると語った」。

改正法は今月すでに提出され、来年に承認される見通しで、特許法の違反者は一層厳しい行政処分と罰金の対象となるという。

「中国製造2025」の国産化率引き下げ

さらに、米国がトランプ政権だけでなく、議会も批判している「中国製造2025」についても、改正案の作成に着手しており、来年初頭に発表する方向で調整されているという(ウォールストリート・ジャーナル)。

中国製造2025は、2015年5月に発表されたもので、次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と23の品目を設定し、製造業の高度化を目指す産業政策だ(日経新聞)。

ハイテク色が濃いことから、ドイツが進める「インダストリ4.0」の中国版とも言われるが、素材やキーデバイスの国産化、製品や製造システムのエコ化など、日米欧がすでに実現している目標も掲げており、キャッチアップ色の強い産業政策でもあるという。

たとえば、中国はスマホやパソコンを大量に輸出しているが、海外からキーパーツを輸入して組み立てているだけで、中国のICチップの貿易赤字額は、2011年の1376億ドルから2017年の1933億ドルに急増しているという。こうした海外依存の半導体製造などで先進国に追いつこうという狙いも込められているというわけだ。

しかし、日欧米からの評判が悪い。基盤技術産業における国産化率の目標を設定したり、ローカルコンテンツ(部品の現地調達)の要求にとどまらず、地場企業への資金援助、政府支援による生産能力過剰問題、外資企業への技術移転への要求、海外技術買収への国家政策的介入など、国家管理的な政策が含まれているからだ(ここまでのくだりは富士通総研、金堅敏氏のリポートに拠る)。

中国が進めている改正案の具体的内容について、上記ウォールストリート・ジャーナルは、関係筋の話として「米国への大きな譲歩として、数値目標を取り下げることが検討されているもようだ。中国製造2025では、国内企業による中核部品や原料の製造比率を2020年までに40%、2025年には70%までそれぞれ引き上げる目標を掲げている」と伝えている。批判が集まっている国産化率の見直しである。

トランプ ファーウェイ事件に介入する

ファーウェイの孟副会長逮捕の悪影響はいまのところ現れていないようだ。米中とも交渉とは別レールと扱おうとしている。いや、別レールどころか、トランプ大統領は「もし米国のため、また(米中の)貿易協定の交渉、さらには安全保障に資するなら、必要と判断すれば、間違いなく介入するだろう」と驚くべき司法介入発言をしている(ロイター)。

3月1日を期限とする90日交渉は始まったばかりで、これから紆余曲折の道をたどることだろうが、当面の焦点は投げ返されてきたボールを米国がどう打ち返すかだ。