データは独禁法の想定外だった GAFA規制

「子どものケンカについに親が出ざるを得なくなった」。政府が「GAFA(ガーファ)」に一定の規制をかける方針を決めたというニュースを調べていったら、そんなイメージを持ってしまった。

「GAFA」は、今年の新語・流行語大賞にノミネートされたほどなので、知らぬ人も少ないだろうが、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといったITの巨人たち。

 各社が展開するサービスは、いまや電気、ガス、水道のような 社会に欠かせないインフラとなった、しかも強い支配力を持っている。だから、その行動に透明性を持たせるようルール化しようということらしい。

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データは独禁法の想定外だった

 その際、規制の武器になるのが独占禁止法だ。独禁法というと、市場を独占、寡占した強大企業が、自社に有利な取引を強制したり、価格を思うがままに設定する、競争が働かない市場を連想する。

 実際今年3月、公取委はアマゾンジャパンが、取引先に対して不当な「協力金」を負担させた疑いがあるとして、独禁法違反(優越的地位の乱用)容疑で立ち入り検査をした経緯がある(朝日新聞)。

 すでに検査までしているなら、いまある独禁法で規制すればいいことで新たな規制を設ける必要はないのではとの疑問が湧く。その疑問に対する答えは「データ」だそうだ。ネットを通じて集めたユーザーのデータを独占、寡占していることが優越的地位につながっているというのだ。

 独禁法は、たとえば企業買収の際には、売上高のシェアで寡占・独占を判断していた。データは想定外だった。「データの寡占・独占」にまで法の網を広げようというのだ(毎日新聞)。

 12月12日に公表された「中間論点整理」には、データがお金になることが次のように明記されている(9㌻)。
「デジタル・プラットフォーマーがプラットフォームを利用する消費者(個人)から収集するデータは、事業活動上、金銭と同様に経済的価値を有すると考えられる。」

 データにまで独禁法の適用範囲を広げるのは、データがGAFAの強さの源で、GAFAと対面する取引業者、消費者を守り、競争市場を守るという大義名分はもちろんあるだろうが、もうひとつの大きな動機は、米国IT企業に太刀打ちできない、日本勢をバックアップすることだろう。冒頭に「ケンカ」と書いたが、ケンカのレベルに達しないほど圧倒的な差を付けられている(毎日新聞)。

GAFAとの第2ラウンドがある

 素直にその現実を直視するしかない。データ争奪戦の本格的な勝負は第2ラウンドにあるとのレポート(10㌻目)もあり、あきらめる必要はない(大和総研、亀井亜希子研究員)。

「GAFAが進出していないブルーオーシャンの事業領域もある。それは、個人の健康・医療・介護データ、自動車の走行データ、工場設備の稼働データ等、バーチャルとは対極の、実世界の生活の中で個人・企業の活動によって生み出され、IoT デバイスによって収集されるリアルデータの領域である。」

 第2ラウンドの市場は大きい。
「リアルデータが世界全体にもたらす経済価値は、Gartner社の試算によると2020年に1.9兆ドル、Mckinsey社の試算によると2025 年に3.9~11.1兆ドル、Accenture社の試算によると2030年に14.2兆ドルに達するとされる。世界各国がこのパイを巡って争奪戦を繰り広げることになる。」

 今回のGAFAに対する政府の規制方針は、防衛戦のようなものだろう。独禁法の次は、フランスが表明したGAFA税かもしれない。しかし、競争の主役は民であり、局地戦ならば、GAFAに勝ってのし上がってくるベンチャー企業も出てくるのではないか。政府がそうした企業を支援する方がいいのか、自由放任の方がいいのか、よくわからないが、最低限、官にやってもらいたくないのは、ホリエモン逮捕のような起業家たちをシュンとさせてしまう振る舞いである。

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