キャッシュレス、カードレス初心者の記③ 意外と多いキャッシュレス人口

「日本は現金志向が強く、ほかの国に比べキャッシュレスに遅れている」これが定説だろう。テレビでもそう伝えられていることが多い。しかし、調べてみると、世の中のイメージとはちょっと違うのではないかと思えてきた。

確かに日本のキャッシュレス決済比率は19.8%(2016年)で、韓国96.4%、中国60%に比べるとずいぶん低い数字だ(こちら)。

ほかの国のキャッシュレス比率を見ても、英国68.7%、オーストラリア59.1%、シンガポール58.8%、カナダ56.4%、スウェーデン51.5%、米国46.0%、フランス40.0%、インド35.1%と日本を上回っている国が多い。ドイツ15.6%ぐらいしか日本よりも低い国はない。

ただ、この数字は家計最終消費支出に対する割合だ。家計最終消費支出とは、GDP(国民総生産)の主要項目で、単位は「円」だから、それに占める割合とはキャッシュレスによる支払額のことだ。

その内訳を見ると、伝えられているイメージとは違う姿が推察できる。内訳の数字は、前出の野村総研のリポートには出ていなかったので、探してみると全銀協金融調査研究会のリポートがあった。2015年の数字で、キャッシュレス比率は18.2%。その内訳は、クレジットカード16.5%、デビットカード0.1%、電子マネー1.6%とクレジットカードの利用が圧倒的に多い=同リポート17㌻(注)。

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楽天Edyの発行枚数は1億超え

電子マネーとは、スイカやパスモ、nanacoであり、高額の買い物よりも飲料品、食料品に使われるだろうから利用金額は小さいので割合も小さくなる。逆に、クレジットカードは高額商品の支払いに利用されることが多いだろうから、当然、その比率が高くなるはずだ。

2割弱という比率を見せられると、5人に1人しか使っていないのかと勘違いしそうだが、あくまでも金額の比率であり、実際の利用者はもっと多いのではないか。

その推測を後押しするのが、プリペイドカードの電子マネー「楽天Edy」の発行枚数が1億枚を超えているという事実だ(こちら)。nanacoも6000万枚を超えている。こうした数字を見ると、カードで買い物する人は数千万人はいるのではないか。

「低い」とされる日本のキャッシュレス比率だが、利用者数から見ると、意外とキャッシュレス生活は浸透しているように思える。

安倍政権は、キャッシュレス化の推進に熱心で、閣議決定した「未来投資戦略2017」では、「2027年6月までに、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とする」との目標を掲げている(20㌻)。この数字も、利用者の割合ではなく、利用額の数字だろう。

キャッシュレスOKの店舗が増えていくためには、QRコードの普及が必要になってくるが、キャッシュレス社会の下地はカードによってすでに形成されているようだ。

次の一歩は、カードからスマホの財布化だろうか。日本で利用者が多いiPhoneも2年前からようやくそれが可能になったので、徐々に増えていくかもしれない。

(注)全銀協リポートの数字は民間最終消費支出に対する割合。民間最終消費支出は、前出の家計最終消費支出に非営利団体の消費を加えたもの。非営利団体とは、私立学校、宗教団体、政党などのことで、それらの消費は家計の消費に比べ小さいので、この場では、ほぼ同じと見ていい。

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