【今週起きそうなこと(1月14日~)】① 北方領土返還、報道では盛り上がるものの

1月14日~20日 ※海外は現地時間
週内 ゴーン元日産会長の保釈判断
14(月) 日露外相会談(午前、モスクワ)こちら
15(火) 英・EU離脱合意案議会採決 こちら
16(水) 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(午後2時)
11月の機械受注
17(木) 愛知県知事選告示(2月3日投開票)
阪神大震災から24年
18(金) 12月の全国消費者物価指数
19(土)
20(日)
(出所)時事通信、ジェトロ等

[日露外相会談]

1月14日週の要注目は、15日に予定されている英議会下院のブレグジット合意案採決だろう。これは別途に書いた(こちら)。14日にモスクワで日露外相会談が開かれる。テーマは日露平和条約締結で、北方領土問題のことが話題になるだろう。

会談では、ロシア側の方針は、「北方領土が第二次大戦の結果としてロシア領になったとするロシア側の歴史認識について、日本の考えを表明するよう求めていく」そうだ(毎日新聞)。

日本側は、昨年11、12月の日ロ首脳会談で、2島返還ならばプーチン大統領の脈ありと踏んだのか、安倍首相は歯舞、色丹返還で動いている。

政治評論家の伊藤惇夫氏は、文化放送の番組「くにまるジャパン」(19分47秒以降)で、2島返還にかける首相の姿勢を「かなり前のめり」と表現していた。

伊藤氏は、安倍政権が求心力を維持する要素として、①歴史に名が残るほどの政策テーマを設定しそれを前に進められるか、②政権に対する期待感を維持できるか、③党内基盤を崩さないで固め続けられるか、④7月の参院選など選挙に勝てるか--の4つをあげていた。

北方領土返還は、憲法改正と並んで、①に該当する。しかし、北方領土問題を以前からフォローしてきた人からの目には、2島返還も難しいという。

軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、昨年の日露首脳会談で、メディアが返還話に盛り上がった時、自身のツイッターに、そう簡単ではなく、5年前に書いた記事の情勢は何も変わっていないとの趣旨をアップしていた。で、その記事を読んでみた<「プーチンは2島返還で決着したがっている・・・」根拠なき定説はなぜ生まれたのか>(JBPRESS)。

黒井氏は、「平和条約締結後に2島返還」で合意した1956年の日ソ共同宣言当時は、ソ連側も2島返還で決着を付けたがっていたと見る。しかし、その後の冷戦の中で、ソ連はその方針を撤回した。以降、ソ連政府もロシア政府も、一度として2島返還を明言したことはないという。

現れては消えた「返還話」

これまでも返還に期待を持たせる話はあり、黒井氏はそれをひとつひとつ検証していく。

まず、1992年3月、当時のゲオルギー・クナーゼ外務次官が渡辺美智雄外相に「平和条約を締結。歯舞、色丹2島を日本へ引き渡す」と非公式に打診した。しかし、モスクワに住んでロシア政界やロシア外務省を取材していた黒井氏の耳に聞こえてくるのは「領土を引き渡すなんて、あり得ない」という発言ばかり。

「クナーゼ氏は学者畑の人物でクレムリンでの発言力は皆無に近く、大胆な外交政策を主導できたとは思えず、クナーゼ氏独自の構想であって、それ以上のものではないと考える」。

次に、小沢一郎氏が自民党幹事長だったとき、ゴルバチョフ大統領の側近から、カネで北方領土を返還するという話があり、1991年3月にモスクワに渡ったが、そんな話はまったくなかったという。

黒井氏は、「国家としての秩序が破綻状態にあったソ連では、怪しい政治ブローカーや自称「大統領の側近」などが跋扈しており、~小沢氏たちは単に、そうした類の話に引っかかっただけである」と推測している。

1997年11月のクラスノヤルスク合意では、「2000年までに日露間の平和条約を締結するよう全力を尽くす」と期限が明記されたが、現実を見れば画に描いた餅だったことがわかる。

さらに、1998年4月の橋本龍太郎首相=エリツィン大統領会談では、とりあえず北方領土の帰属だけでも日本側に返還させようという橋本首相が「川奈提案」を示し、「エリツィンも乗り気だった」というが、結果的には日本側の一人相撲だった。

2001年3月のイルクーツク声明では「1956年の日ソ共同宣言が(中略)交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書」と記されており、日本側では「日ソ共同宣言を認めた」→「少なくとも2島返還を約束した」と解釈されている。しかし、ロシア側に「2島返還の言質を取られない」という思惑から生まれた表現だろうと黒井氏は読む。

外相会談を前に、水を差すような話になったが、黒井氏も書いているが、返還を望むことと「情報を客観的に分析する」ということは別の問題だ。どうも日本の報道は「返還が進んでいる」ムードを発しすぎている。スマートな報道を期待したいが、まあそう簡単には変身できないだろう。

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