【1月28日週の政経予定】米中通商交渉 「難題先送りで合意」の楽観論

1月28日~2月2日 ※海外は現地時間
週内
28(月) 通常国会召集/衆参両院本会議で安倍首相の施政方針演説
18年12月19・20日の日銀金融政策決定会合議事要旨
29(火) 米連邦公開市場委員会(FOMC)30日まで
英議会でEU離脱代替案と議員修正案の審議と採決
1月の月例経済報告
08年7~12月の日銀金融政策決定会合議事録
30(水) 米中の閣僚級通商協議(ワシントン、31日まで) こちら
衆院で各党代表質問
18年10~12月期の米GDP速報値
FOMC最終日(声明は14時、パウエル議長会見は14時半)
米国が孟晩舟ファーウェイ副会長引き渡しをカナダに正式要請する期限
アップル決算
31(木) 衆参両院で各党代表質問
1月22・23日の日銀金融政策決定会合の「主な意見」
12月の鉱工業生産指数(8時50分)
アマゾン・ドット・コム決算
1月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)
1(金) 日欧経済連携協定(EPA)が発効
参院で各党代表質問
12月の労働力調査(失業率)、有効求人倍率(8時半)
1月の米雇用統計(8時半)
2(土) 米、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の義務履行停止期限
3(日)
(出所)時事通信、各種報道
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30日からワシントンで交渉

30~31日とワシントンで米中の閣僚級通商協議に注目。中国側は劉鶴副首相、米国側はライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表、ムニューシン財務長官らが出席。協議の焦点と見通しを考えてみる。

米中通商交渉は「大きく進展している」とのムニューシン米財務長官の発言をロイターが25日午前6時(日本時間)直前に流した。まるで、ほんの3時間ほど前に同じくロイターが流した「妥結点まではまだ何マイルもある」というロス米商務長官の発言を否定するかのようだった。

もっとも、これまでの米中貿易紛争の経過を見てきた人ならば、対中融和派のムニューシン氏と強硬派のロス氏がそれぞれの立場を主張した「さもありなん」発言と腑に落ちるところがあるだろう。

交渉をうまくまとめるには融和派と強硬派を組み合わせることだから、両氏は自らを主張しただけでなく、交渉チームの一員として示し合わせてやったのかもしれない。いや、そこまでトランプ政権はチームワークが良好ではないか。

専門家のコンセンサスは「合意」

ひとつ言えることは、両氏の発言は彼らの意図とは別に、いまの米中交渉の真実の半分ずつを伝えていることだ。ムニューシン氏は、対中貿易赤字削減という貿易面での交渉が比較的順調であることの表明だ。1月7日~9日に北京で開かれた米中次官級協議では、米国産農産物やエネルギーの輸入拡大の話がかなりまとまってきていることをうかがわせた(Kobaちゃんの硬派ニュース)。ムニューシン発言はその部分にスポットライトを当てた。

逆にロス氏は、交渉が難航している部分にスポットライトを当てている。米国が中国に要求している構造的な変化の部分で、技術など知的財産権の奪取、米企業に対する差別的扱い、政府による特定産業への補助などを見直すことだ。こちらは、中国の産業政策や中国共産党の支配体制に関わってくるような問題なので、モノを買ってすむような話ではない。

構造的な変化に重きを置くならば、米側は満足できる状況には至ってないようだ。では、交渉はうまくいかないかというと、そうでもないらしい。

South China Morning Post』は、専門家たち(アナリスト)の見方をこう紹介している。

「中国と米国は、貿易戦争の休戦が終わる3月1日までに、たとえ技術移転の強制や政府の企業に対する補助といった重要な問題を解決できなかったとしても、交渉合意に達するよう取り組んでいるようだ」

3月1日までに合意できなければ、米国は中国からの輸入品2000億ドル分に対し、関税を10%から25%に引き上げることになっているが、「貿易戦争のエスカレートを避けて合意するというのが、(専門家の間での)コンセンサスだ」

ニューヨーク株式市場も米中対立を材料に株価を下げていたが、対立緩和を見込んでここのところ盛り返している。

South China Morning Postは香港の英字紙だが、昨年7月に観測筋の話として伝えた記事は正確だったと思う。中国指導部がナショナリズムをトーンダウンさせるよう幹部たちに明確な指示を与えているという記事だ。その後の中国側の対応を見ると、米国側の関税攻勢やチャーチルの「鉄のカーテン」演説にたとえられたペンス副大統領の演説にもナショナリズムを鼓舞するような発言は出なかった。(Kobaちゃんの硬派ニュースにも引用 )

トランプ大統領 軟化

合意するとの見方の背景は、ひとつには米中の交渉が貿易にとどまらないことがはっきりしてきたことがある。中国の体制そのものやハイテク覇権争奪をも視野に入る広範な問題であり、3月1日期限の90日間交渉では、とりあえず決着できそうな項目で合意するのではないかとの見方だ。

もうひとつは、トランプ大統領の軟化だ。対中融和、強硬、どちらの道を選ぶかは最終的にトランプ大統領の決断だが、ロシア疑惑やメキシコの壁問題での民主党との対立など、足下に火がついてきているし、そろそろ来年の大統領選も気になってきて、ひとまず対中交渉は矛を収めるのではないかという見方だ。

貿易紛争が株価を大きく下げたり、そもそも世界経済の減速が予測される中、中国との対立を長引かせると米経済が悪化する懸念が強まっているのもトランプ大統領は気にしているだろう。

30日からの協議で、「中国の米国からの大量購入+α(構造的問題でいくつかの改善案)」の筋道を作り、3月1日までに合意に達するというのがありうるシナリオだろうか。