自由の国を訴えた独裁国家の企業・ファーウェイの論理とは

自由の守護神・米合衆国憲法を盾に取って独裁国家の企業が米国政府を訴えるという、奇妙な出来事が起きた。中国、ファーウェイ(Huawei)の提訴である。

「中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は(3月)7日、同社など一部の中国企業の製品を米政府機関が調達することを禁じる「2019年度米国防権限法」が米憲法違反だとして、テキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表した」(日経新聞

私権剥奪は違憲

ファーウェイが違憲と主張する「19年度米国防権限法(National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2019)」は2018年8月、超党派議員の賛成とトランプ大統領の署名で成立した。4701条(Section)まである膨大な法律で889条にファーウェイ、ZTEなど中国5社を名指ししている。政府機関が5社から製品を調達するのを19年8月から禁じ、20年8月からは5社の製品を使う企業との取引も打ち切るという厳しい内容だ。

原文はどんなものかのぞいてみたが、とても読む気にはなれない。のぞくだけで十分だ。

ファーウェイはこの889条は合衆国憲法が禁じている「私権剥奪法(bill of attainder)」に該当するから違憲だと主張している。ファーウェイのHPを見ると、「合衆国憲法の私権剥奪法条項、デュープロセス条項に反すると同時に、米議会が立法だけでなく法の裁決と施行まで行おうとしている点で、合衆国憲法における三権分立の原則にも反しています」とその主張を展開している。

私権剥奪法とは文字通り、個人、団体の権利、利益を剥奪するもので合衆国憲法1章9条3項で「私権剥奪法または事後法を制定してはならない」と禁じている(合衆国憲法)。私権剥奪法の禁止は政府の暴走を封ずるのが目的だろうが、米国では、実際に違憲判決の事例がある。1946年に共産主義団体に関与した政府公務員に俸給を支払わないとする法律が違憲とされた。また、最近では非営利団体への資金提供を制限するノースカロライナ州の法案を連邦判事が違憲と判断した(神戸大ロイター)。

ファーウェイに勝ち目はない

では、ファーウェイにも勝ち目があるかというと、米国の大半の法律専門家は「ない」と見ているそうだ(以下、上記ロイター記事に拠る)。

というのは、一般的に、米国の裁判所は、議会や行政府が下した国家安全保障上の決断に疑念をはさむことに消極的だからという。安全保障のことを決断するのに適した立場にあるのは議会や行政府であり、裁判所はその立場にないと考えているようなのだ。

先例がある。日本でもアンチウィルスソフトでその名が知られるロシアのカスペルスキーが、自社のソフトが米政府のネットワークから法律で締め出されたことから提訴した。

同社は私権はく奪法を主張したが、米連邦控訴裁判所は2018年11月に、訴えを却下した。国家の安全を守るためには議会に裁量を認めるとの判断だったという。

この判決は控訴審で、その前の18年5月にコロンビア地区連邦地裁が訴えを棄却している(スラド)。

ファーウェイが勝ち目のない戦いに挑んだのは、起訴された孟晩舟副会長への側面支援という意味もあろうが米中ハイテクウォーの一環として中国政府からの訴訟の勧め、バックアップがあったからではないかと勘繰ってしまう。しかし、ファーウェイはあまり中国政府の言うことを聞かないようで、習近平国家主席のお気に入りはファーウェイよりもZTEだそうだ。独裁国家の企業も一色に染まっているわけではないらしい。次回はそのあたりのことをまとめる。

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