ピークを迎えたかAIバブル 幻滅期の試練に耐えるか

AIと銘打てばお金が集まる、そんなAIバブルの状況になっているようだ。

AIをやってないのにAI企業

スタートアップ企業への広汎な調査からバブルが浮き彫りになった。ロンドンのベンチャーキャピタル(VC)、MMCベンチャーズが欧州のAIスタートアップ企業2830社について、公開情報や企業経営者からの聞き取りを元に調査したところ、AIの看板を掲げながら、2830社中40%でAI技術を応用している証拠が見つからなかった(日経新聞=フィナンシャルタイムズ)。

ロンドンを拠点とするスカイスケープという会社のウェブサイトには、「スカイスケープはAIを使って屋上スペースを分析し、最適な活用法や都市の課題解決に役立つ利用法を突き止めます」と書かれている。しかし、現時点では機械学習やAIを用いていないにもかかわらず、同社はAIスタートアップ企業として扱われているという(同上)。

AI事業を標榜する企業は、他のソフトウエア企業に比べて大型の資金調達や高い企業評価額を獲得してきた。MMCの調査によると2018年、資金調達1回あたりの平均額はAIスタートアップ企業がソフトウエア・スタートアップ企業より15%高かったという(同上)。

インターネットビジネスの黎明期、ドットコムの名前が付けば資金が集まったドットコムバブル、ネットバブルを思い起こさせる。

「どこまでがホラ話なのか」

AI研究者の間でも、本物の進歩の中に誇大広告が入り混じっていることでAIの進展に水を差すと心配する声があがっている。

カーネギーメロン大学のリプトン助教授は、「どれが本物の進歩で、どれがホラ話なのか、判別するのがますます困難になってきています」と嘆く。AIには何ができて、何ができないのか素人にはわからない。

そんなAI幻想が膨らませてしまった責任は業界だけでなく、メディアにもあるとリプトン助教授は言う。本物の進歩と表面的な宣伝とを区別するための十分な努力をしていないというのだ(MIT Technology Review)。

IT分野の調査、コンサルティング会社、ガートナーは新技術の盛衰を描くハイプサイクルというチャートを生み出し、毎年発表しているが、2018年版では、AIの主役技術、ディープラーニングは、IoTプラットフォームと並んで「過度な期待のピーク期にある」と指摘している(IT Leaders)。

ハイプサイクルは、黎明期、過剰な期待のピーク期、幻滅期、啓蒙活動期、生産性の安定期の5段階に分けている。
各段階のイメージはこんな感じだそうだ(Wikipedia)。
①黎明期(技術の引き金)=新製品発表やその他のイベントが報道され、関心が高まる。
②過剰な期待のピーク期=世間の注目が大きくなり、過度の興奮と非現実的な期待が生じることが多い。成功事例が出ることもあるが、多くは失敗に終わる。
③幻滅期= 技術は過度な期待に応えられず急速に関心が失われ、メディアはその話題や技術を取り上げなくなる。
④啓蒙活動期(啓蒙の坂)=いくつかの事業は「啓蒙の坂」を登りながら継続し、その利点と適用方法を理解するようになる。
⑤生産性の安定期(生産性の台地)=技術は徐々に安定し、第二世代、第三世代へと進化する。台地の最終的な標高は、その技術が広範に適用可能かあるいはニッチ市場のみかによって、様々である。

②の「過度な期待」をバブルと理解すれば、いまはバブルの真っ最中だが、まもなくそれも終わろうとしていると言えそうだ。

二度あった「AIの冬」

問題は、ディープラーニングが主流のAIが幻滅期を乗り越えて、安定期にたどりつけるかだ。AIは過去に二度の冬を経験しているからだ。

最初の冬は1970年代で、その前から活躍し始めたコンピュータに科学者が期待をかけてブームが起きた。米DARPA(国防高等研究計画局)をはじめとする大口のスポンサーがAI研究に気前よく予算をつけた。しかし、期待のかけすぎとわかった。

次いで、AIは1980年代に第二次の世界的なブームを迎える。知識やノウハウをルール化してコンピュータに移植する「ルール・ベースのAI」と呼ばれる。日本でも通産省(当時)が主導した第5世代コンピュータ開発に巨額の予算が付けられた。

しかし、いずれの国家プロジェクトも大した成果を上げることができず期待が幻滅に変わった(以上、『AIの衝撃』小林雅一著、講談社現代新書87~90㌻)。

ディープラーニングが同じ轍を踏むのではないかという心配である。前述のMIT Technologyの記事は、「深層学習(ディープラーニング)モデルの多くは、膨大な量のデータを与えられた場合にしか上手く機能しない。加えて、急速に変化する現実世界の状況にはうまく対応できないことが多い」と限界を指摘している。

「急速に変化する現実世界」とは、自動運転の際の周囲の状況を連想させる。ディープラーニングでは役不足なのだろうか。

素人には新技術の真贋判定は難しいが、努力はしてみよう。

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