5G商戦に出遅れ 日本の通信機器メーカーの凋落

中国ファーウェイ(華為技術)が次世代通信技術5Gの国際標準に狙いを定めていることを前回ブログでまとめた。その野望が米国の虎の尾を踏んでしまったのかもしれないが、片やNECや富士通など日本の通信機器メーカーは波風立てずこじんまりと稼ぐ道を選んでいるようだ。

5G商戦の当面の焦点は、携帯端末と送受信する基地局の整備だ。現状の基地局の勢力図を見ると、2017年の世界の基地局売上高シェアの順位は、①ファーウェイ27.9%、②エリクソン(スウェーデン)26.6%、③ノキア(フィンランド)23.3%、④ZTE(中興通訊)13.0%で、この4強が90.8%のシェアを握る。これに韓国サムスン電子3.2%が続き、日本のNEC1.4%、富士通0.9%は6、7番手の位置に甘んじている(日経産業新聞)。(この段落、基地局のシェアを5G基地局の現状のシェアと勘違いしてました。間違いに気づき、2019年6月3日訂正しました。申し訳ありません)。

日本メーカーは、5G時代にこの勢力図をひっくり返せるのだろうか。数字の小ささを見る限り想像しにくい。富士キメラ総研が昨年6月に発表した調査によると、世界の基地局の市場規模は、2017、18年はわずかで、やっと2019年に1100億円に届く。その後の成長はめざましく2023年には4兆1880億円に達する。

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中国、北欧勢がシェア90%

基地局はベライゾンやNTTドコモなど企業向けのビジネスだが、もっと成長が期待されているのは、消費者向け(BtoC)のスマートフォン・ウォッチ、ドローンなど5G対応機器市場である。2019年に3兆5165億円、2023年には26兆1400億円まで拡大すると予測されている(以上、MONOist)。

NEC、富士通はBtoCの商戦に重点を置くつもりだろうか。調べれば、日本メーカーの5G戦略のことがネット上に出ているかもしれない。しかし、スマートフォンやスマートウォッチでいまからアップル、サムスンを逆転しようとは思っていないはずだ。

5G商戦はこれから本格化するので、まだ躍進の余地はあるのは承知だが、過去の日本のエレクトロニクスメーカーの惨敗ぶりを見ていると、どうも悲観的にならざるをえない。

過去の惨敗とは、メモリー用半導体、テレビ画面(ブラウン管から液晶へ)、パソコン、携帯電話(ガラケー)、SNS、クラウドなどである。クラウドを除けば、世界的な技術水準を誇ったり事業化が早かったのに世界ランキングから脱落していった。

クラウドは過去のブログで、その惨敗ぶりを書いた。こんなエピソードも紹介した→政府系会議の席上で、中西宏明・日立製作所会長の言葉に反論し、DeNAの南場智子会長が「これまでの情報革命における覇権争いに日本は惨敗したと感じている」と発言した。

日本の通信機器メーカーが凋落した理由について、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏は、通信の自由化で電電ファミリー(という言葉は使ってないが)の恩恵を享受できなくなったことを挙げている(鈴木氏の内容をものすごく端折ってます)(ダイヤモンド)。

無線技術が軽視されていた

鈴木氏は、もうひとつの理由も挙げている。それは、NTTが国内の固定電話網の技術陣が主流という発想から抜け出られなかったことだ。そして、興味深いifの世界を描いている。
「もし、2000年代にNTTの研究所がスピンオフして、NECないしは富士通と合併し、NTTと距離を置いたとしたら――。一番の成長分野である無線技術に力を入れ、今とは違う競争の流れができていたかもしれません」

確かにそうなっていたら強力な通信機器メーカーがいま4強に伍していたかもしれない。ただ、NTTが自ら研究所を手放すわけがない。だから、手放さざるを得ない状況に持っていくしかない。M&Aのプロならば、実現へのシナリオを描けるのだろうか。

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