車の所有からシェア 次世代自動車社会の入り口①

先日、グーグル系の自動運転車企業、ウェイモ(Waymo)が「自動車の街」デトロイトで自動運転車を生産するというニュースが流れた(Techcrunch)。それもレベル4という完全自動運転(レベル5=ハンドル、アクセル不要)にあと一歩というハイテクカーだ。

数千台生産する予定で、ウェイモが昨年12月にスタートさせた無人タクシーに使われる。このニュースと併せて、米国ではライドシェアが当たり前になったことを伝える記事を読むと、ライドシェアサービスのない日本では感知しにくい次世代自動車社会を少しイメージできたので、紹介しよう。

まず、米国のライドシェアの現状から。日経XTECHが最近、面白い連載記事を載せている。このテーマにこれほどふさわしい日本人筆者はいない。「元日本企業の駐在員で、シリコンバレーに24年在住し、現在はウーバーの競合であるリフトの運転手をしている」吉元逸郎氏だ。以下はほぼ、吉元氏の記事に拠るものだ。

タクシー利用が激減 利用率わずか5%

ここ数年の間に、米国のタクシー業界は激変した。最大手のイエロー・キャブは破綻して、同業者に統合され、老舗タクシーが看板を下ろすなどタクシー会社は事業規模を縮小しているという。レンタカー会社も利用客が急減しているそうだ。借金を抱えた個人タクシードライバーの自殺も時折報道される。

激変を引き起こしたのはウーバーやリフトで、米国での車による移動手段(自家用車を除く)を調査したところ、ウーバーが48%、リフトが25%で、両社の合計シェアは73%に及ぶ。一方、レンタカーは22%で、タクシーはわずか5%程度にまで減ってしまったという(米調査会社Certifyによる  2018年第2四半期時点)。

過去4年間でライドシェアの利用率は何と10倍に伸びた。一方で、レンタカーは6割減、タクシーに至っては7分の1にまで利用率が減ってしまったというから、交通利用のパイ全体が増えたというよりもゼロサムに近いのだろう。

米国は規制緩和に寛容な社会なのか、あるいはタクシー業界の力が弱かったのか、短期間のうちに、日本では白タク扱いのライドシェアが市民の間に定着してしまった。

シェア社会の入り口に来た

もちろん、ライドシェアそのものにタクシーよりも消費者を引き付ける魅力があった。それは「安い、早い、快適なサービス」と吉元氏は指摘する。価格は、ウーバーやリフトがシェア拡大を最優先させているので、赤字覚悟の料金設定でタクシーよりも2、3割安い。また、米国ではタクシーのサービスが日本より劣っているという。

ドライバーは乗客から5段階評価されるので、不良ドライバーは淘汰される。面白いのは乗客もドライバーから評価されるので、乗車依頼を拒否できる。

リフトが3月にニューヨーク証券取引所に上場する際に提出した資料によると、吉田氏が属するリフトのドライバーを1回でも経験した人は190万に及ぶという。また、2018年に1回でもリフトを利用した乗客の数は3070万人を数える。リフトよりも規模が大きいウーバーも加えたら8000万人ぐらいになるだろう。ライドシェアサービスは米国市民の間にすっかり定着している(なお、リフトの筆頭株主は楽天、ウーバーはソフトバンクグループ)。

リフトの報告によれば、リフト利用者の半数が自分の車を利用する頻度が減ったと言い、22%は「車を所有することはもはや重要ではなくなってきた」と回答しているという。

次世代自動車をひと言で表現する「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)」が最近の流行り言葉になっているが、米国は、そのうちの「S」=「シェア社会」への入り口に到達したようだ。

無人化すれば赤字1000億円が黒字1900億円に

吉田氏の記事は連載で、2回目はドライバーとしてお客さんの乗車依頼を受ける様子ややりとりを伝え、自らの収入額も詳細に明かしている。

そして3回目に自動運転車による無人タクシーについて書いている。その中に書かれているのだが、自動運転車の生産を始めるウェイモは、カリフォルニア州内の公道で運転席にドライバーがいなくてもテスト走行できる許可証を唯一もらっている。完全無人走行OKなのだ。

現在、リフトもウーバーも赤字企業なのだが、黒字に転換するには無人化でドライバーの人件費を削減する必要がある。リフトは、自動運転車の導入時期について、「5年以内に一部開始、10年以内に過半数の乗車に対応できるようにする」とコメントしているそうだ。

筆者の吉田氏は、シリコンバレーでベンチャーキャピタルの仕事でもしていたのだろうか、リフトが自動運転車を導入した場合の収支を推測してしまう。推測のプロセスもきちんと書いているのだが、結論としては現在の赤字1000億円が黒字1900億円に転換する、利益率20%を超える企業に変身するというのだ。

次回は実際に始まったウェイモの無人タクシーについてまとめる。