車の所有からシェア 次世代自動車社会の入り口② 

グーグル系の自動運転企業、ウェイモ(Waymo)が昨年12月から米アリゾナ州フェニックスで無人運転タクシーを世界で初めてスタートさせた。「Waymo One」と呼ぶ配車サービスで、限られた地域、ごくごく限られたメンバー、現在は運転席にドライバーが同乗するなど、まだ試験的な色合いが濃い。

無人タクシーが走るフェニックス

とは言え、前回紹介したように米国ではリフト、ウーバーのライドシェアがすでに定着している。スマホでタクシーを呼ぶスタイルは当たり前になっていて、配車段階を自動運転車に変えれば無人タクシー化が完成するところまで来ている。下地は整っているだけに、フェニックスでの試みが成功すれば、米国では各地で無人タクシー化が進むかもしれない。

そうすると、車の所有から共同利用に向かうMaaS(マース=モビリティ・アズ・ア・サービス)、自動車産業を大きく変貌させるインパクトを持つというMaaSに近い社会が米国で実現する。

無人タクシーサービス「Waymo One」に関心を持った理由はそんなところにある。自動車業界の変貌が、そこから始まるかもしれない。

では、実際にどんな様子なのかを紹介しよう。CNETが現地のティム・スティーブン記者の体験記を昨年のサービス開始直後に掲載している。以下、その記事に拠る。

15分の乗車で7ドル

ユーザーは、Waymo Oneアプリをスマホに入れ、現在地と目的地を入力すると移動にかかる時間と料金が表示される。ティム記者の場合は、15分の移動で約7ドル(約790円)だった。

迎えに来たのは「Chrysler Pacifica Hybrid」で、屋根の上などに自動運転のレーダーやLidar(ライダー)だろうかセンサーを積んでいる。車体自身はWaymoが製造するわけではなく、自動車メーカーが製造した既存の車を加工している。ウェイモの工場で生産されるJaguar「I-PACE」型も投入予定だ。

車に乗り込んだら、大きな青いボタンを押すだけで走り始める。冒頭で述べた通り、まだドライバーが同乗しているが、ティム記者が何回か試乗したときにドライバーが出番になる危険な場面は一度もなかった。「UberとLyftが普及して以来数年の間に筆者が体験してきた多くの運転よりも安全だと思ったのは間違いない」と書いている。

無人タクシーが走るフェニックスは、人口152万人(2015年)というから神戸市(152万人、2019年)とほぼ同じ。砂漠のど真ん中に作られた町で郊外の至るところでサボテンが見られるという。

戦前の世界大恐慌の時、ニューディール政策でコロラド川の電源開発により航空機産業や電機産業が発展したが、近年はカリフォルニア州から半導体、エレクトロニクス産業が大量に流入してきて急速に発展、シリコンデザート(砂漠)とも呼ばれるという。無人タクシーの試験地としては相性がいいようだ(ウィキペディアPhoenix)。

ティム記者も「フェニックス都市圏の道路はおおむね広くて標識の整備も進んでおり、地形や天候が特に厄介なわけではない」と書いている。

走行中、時速60キロ以上の状態で急ブレーキがかかったことがあった。記者は気づかなかったが、交通の流れから逸脱した車がそのまま進行すれば衝突するのに反応したらしい。

無人タクシーは過去にウーバーがペンシルバニア州ピッツバーグで実施していたが(Techcrunch)、同社のアリゾナ州テンピでの自動運転車の死亡事故により、昨年中止に追い込まれた(CNN)。

ウェイモは、フェニックスでの試みが成功すれば、無人タクシーサービスを順次広げていくようで、CEOのジョン・クラフチク氏は、次はサンフランシスコのベイエリアへサービスを拡大するとインタビューに答えている。

自動車メーカにはならないウェイモ

自動運転の開発競争ではウェイモ、テスラが群を抜いて先を走っているようだがウェイモは自動車メーカーになるつもりはないらしい。クラフチクCEOは、ウェイモ自身が車両を製造することはないと述べている(MITテクノロジーレビュー)。ソフトやLidarなどのセンサー機器の提供で主導権を握ろうとしているのだろうか。

となると、自動車メーカーとの提携が今後の焦点になってくるのだろうか。業界を左右する動きが進行中だ。