トランプはファーウェイを許すか ZTEは1カ月で許された その経緯

米国によるファーウェイ(華為技術)制裁が解除される可能性を考えてみよう。先例があるからだ。同業のZTE(中興通訊)は昨年4月、ファーウェイと同様の制裁を受けながらも、わずか1カ月ちょっとで米政府が制裁緩和に動き出した。なぜ、それほど早かったのか。ファーウェイは事情が違うのか。まずは、その経緯をたどってみた。

ZTEのウソが経営危機を招く

米商務省がZTEへの制裁を決めたのは2018年4月16日。もともとの制裁理由は、ZTEが米国製の通信機器を違法にイランと北朝鮮に輸出したからだが、昨年4月の制裁は、ZTEの合意違反が直接の理由だ。

ZTEは、違法輸出も輸出を隠ぺい工作もすでに認めており、2017年3月23日に11億9000万ドルの罰金を払うことで商務省と合意していた。ただし、執行猶予7年で、罰金のうち3億ドルの支払いと輸出特権は猶予中の身だった。

しかし、ZTEは合意をきちんと守っていなかった。違反行為に従事した従業員を処分することを約束しながら実際にはボーナスを全額支払い、しかも処分したと虚偽報告していた。中国国務院の研究センターも、「ZTEの対応が非常に愚かだった」「誠実な会社運営が必要だ」とZTE批判の報告を出した(ロイター)。

ウソが発覚し、ZTEは執行猶予停止で、輸出特権が剥奪され、米製品の購入を7年間禁止されてしまった(ジェトロ)。ファーウェイに科したのと同様、米輸出管理規則(管理法→管理規制→管理規則に訂正。お恥ずかしい2019/6/6)に基づく制裁だ。

トランプ大統領がZTEに救いの手

ZTEはファーウェイほど企業としての実力を有さず、供給を断たれたことで破綻の懸念も取り沙汰された。そこへ救いの手を差し伸べたのは何とトランプ大統領だった。5月14日に、ZTEが米企業にとっての大口顧客だと述べ、同社に対する制裁の見直しを擁護した(ロイター)。

同22日には、「習近平国家主席への個人的な厚意」を理由に制裁見直しを口にし、その条件として、制裁金を13億ドルと増額するとともに経営陣刷新を求めた。記者団に「習主席がこの問題の検討を私に依頼した」と語っている(Sankebiz)。

多少翻訳すると、「習主席が泣きついてきたから」という理由だろうか。義理と人情の世界じゃあるまいし、国家レベルでは通用しないだろう。対中強硬派を抑えるだけの説得力に欠ける。他に理由があると考えたくなる。何がトランプを動かしたのかいまひとつわからない。

でも事態は進展し、6月7日に、商務省とZTEとは、早くも制裁の見直しで基本合意した。「ZTEが10億ドルの罰金を支払うほか、4億ドルを預託する。経営陣を刷新したり法令順守の責任者を置いたりすることを条件に、米国企業との取引を再開できるようにする内容だった」(日経新聞)。この10億ドルは2017年に払った罰金とは別で新たに科された罰金のようだ。

7月11日には最終合意し、新たな法令違反があった場合に没収する4億ドルの預託金をZTEが払った段階で米国企業との取引再開を認めた(日経新聞)。

ファーウェイをどこまで叩くつもりか

こうして解除までの経緯を見ていくと、改めて際立つのが制裁期間の短さだ。もっとも、短期間ではあっても、ZTEは、5月9日に中国当局に提出した文書で、米政府による制裁措置を受け主力事業を停止したことを明らかにするほどだから(ロイター)、相当な打撃はあったのだろう。それを見極めたうえで制裁解除に動いたのだろうか。だとすれば、トランプ政権にはZTEを叩き潰すまでの意思はなかったことになる。

ファーウェイの場合はどうなのだろう。ZTEと違ってファーウェイはAI(人工知能)、次世代通信技術5Gなど最先端のハイテク分野で世界の先頭を走り、今後もその研究開発費の高水準ぶりから最低限トップグループに入るだろう。

AIは軍事技術に関わってくるし、サイバーセキュリティの要となる通信技術は、安全保障上、米国にとって簡単には引き下がれない分野であるのは想像がつく。ZTEに比べはるかに脅威の存在と捉えているに違いない。

また、トランプ大統領は、商務省の制裁発表と同じ15日に大統領令に署名した。米企業が安全保障上の脅威となる外国企業の通信機器を調達するのを禁止する、国際緊急経済権限法に基づく大統領令だ。メインターゲットはファーウェイだろう(BBC)。商務省が150日以内に具体的な規制内容をまとめることになっている。

すでに米政府機関では、昨年8月から2019国防権限法により、中国通信機器メーカーの製品の使用が禁止されている。禁止範囲を民間にまで広げるわけで、米市場からのファーウェイ完全締め出しの姿勢だ。

こう考えてくると、米国はファーウェイを相当痛めつけるまでは制裁の手を緩めないように思えてくる。ZTEのような制裁解除はありそうもない。あるいは、5Gの進展速度をある程度遅らせるメドがつけば、よしとするのだろうか。

今回の制裁発表前までは、トランプ大統領が描くシナリオは、6月28~29日に大阪で開かれる20カ国・地域首脳会合(G20サミット)の場で、習近平国家主席と会談し、貿易交渉を合意する--と思っていたのだが(Kobaちゃんの硬派ニュース)、そう単純ではなさそうだ。

ただ、トランプ大統領はG20での会談をあきらめていないようだし、ファーウェイ問題を米中貿易交渉の取引に含める可能性を示唆もしている(BBC)。つまり、ファーウェイを痛めつけることを不可侵の目標とは位置付けていないようにも見える。

政権内では、5月に入って対中強硬派(ライトハイザーUSTR代表、ナバロ通商製造政策局長)の声が穏健派(ムニューシン財務長官、クドロー国家経済会議委員長)を押しているように見える。議会にも強硬派が多く、ZTE制裁解除の時は反対の声を上げた(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

そんな力の拮抗の中でトランプ大統領はどう決断するのか。習主席はトランプ大統領の本音を知っているのだろうか。

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