トランプに逆らえば制裁されるのか 米大統領が持つ制裁武器①

トランプ大統領は、ファーウェイのような特定企業への禁輸措置やメキシコへの突然の関税など経済制裁を乱発している。交渉が米国側の思い通りに進まなければ制裁に訴える手法は国際間の緊張を高めるばかりだが、トランプ大統領に制裁の武器を与える米国の法律を調べてみた。

ファーウェイ制裁の根拠法

まず、中国通信機器大手、ファーウェイ(華為技術)に対し米製品の輸出禁止を命じた措置。場合によっては、企業の存亡を左右する措置だが、これを正当化する法律は、輸出管理改革法(ECRAエクラ)だ。実務上の手続きは、その下位法令の米国輸出管理規則(EAR)に基づいて実施される。EARは日本の政省令のレベルに当たる。

このECRAは、昨年8月に立法化されたまだ新しい法律。でも、それ以前からEARは存在し制裁に使われていた。だからと言って、根拠法なしに制裁していたわけではなく、国際緊急経済権限法(IEEPAアイーパ)という法律や大統領令などに根拠を求めていた。

実は、ECRAは1979年に制定された米国輸出管理法に代わるものだが、輸出管理法は2001年に失効した。その後は17年間にわたり、国際緊急経済権限法などでカバーしていたわけだ(EAR超入門の10、11枚目)。柔軟と表現すべきなのか。

制裁の実質を決める輸出管理規則(EAR)が言うところの「製品」はモノばかりではなく、技術、ソフトウェアも含まれる。グーグルのスマートフォンのOS(基本ソフト)「アンドロイド」も対象となるので、グーグルもファーウェイとの取引を停止した(安全保障貿易情報センター=CISTEC 2㌻)。

また、米製品であれば米国からだけでなく、日本に輸出された米製品がファーウェイに輸出される「再輸出」にも適用されるのも大きな特徴。「域外適用」というやつだ。

米製品の輸出は「原則禁止」という独特の考え方

では、なぜ特定の企業が米製品の禁輸対象になるかというと、「現在、または過去に、米国の安全保障上・外交上の利益に反すると認められる」と判定されるからだ(同上12㌻)。

禁輸判定された企業は「エンティティリスト(Entity List)に加えられ、「輸出特権」を否認(剥奪)されてしまう。輸出特権否認という言葉を見た時、意味がよくわからなかったが、米製品に対する独特の考え方があるようだ。

米国の制度では、輸出はすべて免許を得て行うことができる「特権」という形になっている。日本や他の先進国は輸出は「原則自由」だが、米国では「原則禁止」なのだ(同上4㌻)。

「米国に逆らわない行儀のいい海外企業には、米製品を購買できる特権を与えますよ」という趣旨なのだろうか。米国法に詳しい専門家なら「輸出特権」に至った経緯を知っているだろうか。まあ、当面の制裁の嵐には関係ないが。

「あすは日本企業も?」そんなことはない

話を戻して、エンティティリストへの追加、つまり制裁企業と判定は、所管官庁の商務省に加え、国防総省、国務省、エネルギー省の当局者から成るエンドユーザー審査委員会によって決定される(同上12㌻)。

議会の承認はもちろん相談も不要のようだ。中国だけでなく日欧も追加関税の対象とする通商法301条や通商拡大法232条のようにパブリックコメントの手続きもいらないらしい。

ある日、エンティティリストに載せられるわけだ。域外適用で漏れもないし、企業にとっては恐ろしい武器である。安全保障上という理由もあるかもしれないが、米企業の強力なライバルだから叩こうといているのではないかという疑いもぬぐい切れない。

ただし、審査委員会ににらまれれば、日本企業でもあすにでも制裁対象になるかというと、そんなことはないだろう。ファーウェイに対する疑念はずいぶん以前からくすぶっていた。

2012年に米下院情報委員会に幹部が出席、米国の安全保障に対してもたらす潜在的な脅威について問われている(CNET)。昨年禁輸対象となったZTEもいったんまとまった合意を破ったからだ。長く疑いを持たれない限り大丈夫だろう。

2回目は、今回も言及した国際緊急経済権限法についてまとめてみる。メキシコへの関税の根拠法だ。