トランプ大統領は日米安保条約を破棄できるのか

トランプ大統領が日米安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に示していたとブルームバーグが25日伝えた。

記事は、「関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている」と伝えている。

トランプ大統領は、以前から在日米軍の駐留費の負担などに不満を言い募っていたし、好き勝手な発言が多い人だから、場合によっては、日米安保条約廃棄にまで言及するのも不思議ではない。

在韓米軍撤退も

過去には、在韓米軍撤退を主張して、こんな発言をしていた。2017年7月20日のことだ。国防総省の一室で、トランプ大統領は言い放った。
「「三十五億ドル、兵員二万八〇〇〇人だぞ」トランプは、本気で激怒していた。「駐留する理由がわからない。ぜんぶこっちへ呼び戻せ!」(『恐怖の男』323㌻、ボブ・ウッドワード著、日本経済出版社)。

秘密の会議ではない。プリーバス首席補佐官、バノン首席戦略官、マティス国防長官、ティラーソン国務長官、クシュナー上級顧問、ムニューシン財務長官、コーン国家経済会議(NEC)委員長、ダンフォード統合作戦本部議長と政権中枢を前にした発言で、メディアも取材に集まっていた(クシュナー、ムニューシン以外は、その後辞任)。

そんな公式の場でさえ、平気で在韓米軍撤退を命ずるような言い方をするのだから、「トランプ氏の個人的会話」(ブルームバーグ記事)ならば、日米安保破棄発言はありそうだ。

議会の承認はいらない

たとえ、トランプ大統領が廃棄を決めたとしても、政権内からも議会からも反対の渦が湧きおこるから実施できない--と考えたのだが、それでも大統領は反対を押し切って一存で条約を廃棄できる権限があるのだろうか。そんな疑問が起きた。

調べてみると、米国では、条約を締結する時は大統領は上院の承認を必要とする。しかし、廃棄の場合は、大統領が議会を気にせず実施できることがわかった。

過去に例がある。ブッシュ大統領(子)は、2001年12月に弾道迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)からの脱退をロシアに通告したが、上院、下院いずれに対しても提案を行わず、連邦議会の同意も求めなかった。

2002年6月12日、条約脱退の2日前、民主党の下院議員が、議会の合意なしに大統領が単独で条約を破棄することは出来ないとして、コロンビア地区連邦地裁に訴えたが、門前払いとなった(「条約破棄手続の合憲性審査が拒否された事例」土屋孝次近畿大教授)。

もっと遡ると、1979年12月に失効した米華相互防衛条約の例もある。同条約は台湾との間で結んでいたものだが、民主党のカーター大統領が米中国交樹立を受けて、一方的に廃棄した。これに対し、共和党で親台派だったゴールドウォーター上院議員が、議会の承認を経ることなく一方的に国際条約を破棄するのは憲法違反だとして連邦裁に提訴した。しかし、最高裁は「政治的問題だ」として審理を拒否している(日経ビジネス2~3㌻)。

足下を振り返っても、今年2月、ロシアに通告したINF(中距離核戦力)全廃条約の廃棄も議会の承認を得たわけではなさそうだ。米国は、2018年5月8日に離脱したイラン核合意は、正式には国際法上の協定ではないが(アゴラ=長谷川良氏)、その時も議会の承認は得ていそうもない。

日米安保条約には破棄の段取りについても書かれていると思うが、少なくとも米国の統治機構上は、トランプ大統領が日米安保条約破棄の大統領令にでも署名すれば、破棄に向かうことは可能らしい。まさに紙切れ一片がアジア・太平洋の勢力地図を一変させてしまう。

※日本の首相の条約破棄権限についても調べました(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

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