フェイスブック仮想通貨「リブラ」の仕組み③ ビジネスになるのか

リブラ発行の目的は、「グローバルな通貨と金融インフラ」の提供にあることを、「リブラ入門」の1回目で紹介した(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

では、フェイスブックやリブラ協会への出資企業は公共精神を発揮してわが身を削ってでもコストを負担し、皆が利用できる通貨や金融インフラを生み出そうとしているのか。

確かにその面もあるだろう。「人の役に立っている」と思える喜びや、社会に新しい可能性をもたらそうという意識は仕事への大きなインセンティブになる。従業員もやる気が湧くし、最近は投資家でさえ、「環境、社会、企業統治」に配慮する企業に優先投資するESG投資への関心が高まっている。ただ、そうは言っても、投資がビジネスとして成り立たなくては企業は自らを維持できない。

「フェイスブック仮想通貨「リブラ」の仕組み」は今回を含め、次の4本があります。ご参考に!
①発行の目的は?
②普及しそうな理由
③ビジネスになるのか
④反対や危険視の声、相次ぐ

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リザーブの利子が収益源

リブラの場合、どこに投資のリターンがあるのか。ウォールストリート・ジャーナルの記事が解説している。

リターンの源は、リブラの価値を安定的に保つための「リザーブ(準備資産)」から生じる利息だ。前回ブログ(Kobaちゃんの硬派ニュース)で、リザーブの資金源は、企業の出資とユーザーがリブラを買う(入手する)ときに支払う法定通貨であると説明した。

このユーザーが払う資金額がどれぐらいになるかをウォールストリートの記事は推定している。
「世界で銀行口座を持たない17億人のうち1割が10ドル相当のリブラを保有し、それ以外のフェイスブックのユーザー24億人のうち半数が登録し、50ドル投じるとしよう」という想定で、610億ドルのリザーブが溜まる(計算すると617億ドルだが、もともと大雑把な想定なので気にしない)。

リザーブの運用先は、「退屈なほど安全な世界中の債券や銀行預金からなるポートフォリオ」なので、「1%程度の利息かもしれないが、それでも年間6億ドル前後にはなる」。そこから、「おおまかな推計による運営費用の1億ドルを除外」した後に残る5億ドル前後を「創設パートナー24社に加え、さらに100社が事業拡大に伴う資金を出すとしても、出資額に対して毎年40%のリターンを生み出す」と見る。ヘッジファンドも顔負けのリターン率だ。出資額は1000万ドルだから、40%のリターンというと400万ドルということになる。

リブラ創立者の1社であるビザのようなクレジットカード大手の取引の一部をリブラが引き受ければ、リザーブは一気にふくらみ、利益も20億ドルに達すると、記事は続ける。

収益の大小はユーザー数にかかっている。あまり楽観的でない場合、たとえば、「フェイスブックのユーザーが1人10ドルしか投資しなければ、リターンは3%にとどまる」。

フェイスブックのメリットは?

一方、リブラを主導するフェイスブックの収支はどうか。ウォールストリート・ジャーナルの別の記事が、英大手銀行、バークレイズのアナリストの試算を紹介している。

それによると、「仮想通貨は2021年までにフェイスブックに190億ドル(約2兆0618億円)の収入をもたらし得る」という。具体的にどういう収入なのかは書いてないのでわからない。

また、アナリストたちの多くは、もっぱら広告収入に頼っていたフェイスブックをリブラが強化し、成長をけん引することを期待しているという。かなり楽観的な見方だが、記事も、こうした見方を「相当な拡大解釈(a huge stretch=誇張する)」と評している。

フェイスブックが得られるメリットはあまりはっきりしない。リブラ向けの電子ウォレット「カリブラ」を提供したりするので、「新たな金融サービスの展開することや、より多くのユーザー情報を入手することも可能になる。データ収集は、フェイスブックにとって核となるものだ」とデータ獲得のメリットに着目する見方もある(ZUU online)。

ただ、フェイスブックには、5000万人の個人情報を流出させて、信用をガタ落ちさせた記憶がつきまとう。自社の利益を優先させるような態度は表に出せないだろう。リブラに関しても一歩引いた姿勢を取っている。カリブラのウォレットにしても、他のウォレットも使用可能で、リブラへのアクセスを独占しないとしている(同上ZUU)。また、リブラを運営するリブラ協会を今後ずっと主導するわけではないことを明らかにしている。

あくまでも中立的なポジションに立とうとするフェイスブックの姿勢もあり、リブラが同社の業績にどう反映するのかまだ見えないところがある。先のウォールストリートの記事は「フェイスブックはリブラから得るものより失うものの方が多いかもしれない。このサービスは来年まで始まらないため、投資家には少なくともその可能性を検討する十分な時間がある」と締めている。

次回は「リブラ入門」の打ち止めで、米議会や各国中央銀行から反対、危険視の声が相次いでいる状況についてまとめる。

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