フェイスブック仮想通貨「リブラ」の仕組み④ 反対や危険視の声相次ぐ

米上院公聴会など間近

5000万人の個人データを流出させたフェイスブックなのに、性懲りもなく今度は金融データをモノにしようとしている--そんな反発と不信も強いのだろう。米議会からはグローバル仮想(暗号)通貨「リブラ」の計画中止を求める声が出ている。

各国の中央銀行も一斉に反応、既存の金融秩序を脅かす存在として警戒し、計画に反対する中央銀行総裁もいる。米上院は7月16日に早速、公聴会を開くことを決め、7月17~18日にフランス・シャンティイで開かれるG7財務相・中央銀行総裁会議でも、リブラは議題に上るだろう。

米議会の公聴会や証言では、恐らくこれまで紹介したリブラのホワイトペーパー公式サイト以上のものは出てこないかもしれない。G7での注目は、リブラ監視の道筋だろうか。こうした議論を経て、今月中にある程度の方向感が出てくるかもしれないが、反響の広がりは、それだけリブラのマグニチュードの大きさを物語っている。

計画停止を求める声明 米下院委員長

フェイスブックへの不信感を強く表明したのは、米下院金融サービス委員会のウォーターズ委員長(民主党)が出した声明文で、フェイスブックに開発計画の停止を求めた。同社が発表した6月18日と同じ日に反対を表明するという素早さだった(ITmedia)。

声明文は、「フェイスブックは数十億人のデータを持ち、そのデータの保護を軽視する行動を繰り返してきた」と冒頭から非難の言葉を浴びせたうえで、「暗号通貨市場には、まだ明確な規制の枠組みがない」と指摘し、「規制当局は、暗号通貨がプライバシー、国家安全保障、サイバーセキュリティ、取引などにもたらすリスクを脅威と受け止めるべき」と続ける。

そして、フェイスブックに対し、議会と規制当局がよく精査するまで暗号通貨発行の準備を止め、幹部が委員会で証言するよう求めている(Press Releases)。

翌19日には、上院銀行委員会が、「フェイスブックが提案するデジタル通貨とデータプライバシーに関する懸念事項の検討」をテーマに7月16日に公聴会を実施すると発表した(仮想通貨Watch)。

中央銀行は「監視の必要性」

議会の反応は、個人の金融データまでフェイスブックが握るのではないかという疑念が根底にありそうで、プライバシー保護に関心を向けてるようだ。一方、中央銀行関係者は、金融システムの安定性を損なう可能性を懸念している。

ドイツ連邦銀行(中銀)のワイトマン総裁の発言はもっとも反対色が濃い。同総裁は21日、暗号資産の普及は「その運営リスクだけでなく、銀行の預金受け入れやビジネスモデルを危うくするというより根本的な意味でも、システミックになるのはほぼ確実だ」「銀行取引や金融取引仲介を混乱させる可能性もある」と述べた(日刊工業新聞=ロイター)(システミックというのは、システミックリスクのことか?)。

発言を額面通りに受け取れば、明らかに発行反対だろう。もともとドイツ連銀は、堅実な金融政策を取る志向が強いので、リブラのような暗号通貨に対する反発も強いようだ。

イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は21日のBBCのインタビューで、「安全である必要がある。さもなければ実現しない」と語り、米連邦準備理事会(FRB)など各国主要中銀と監視する必要性を語った(同上日刊工業新聞)。

米FRBのパウエル議長は19日リブラについて、「通貨として広く用いられる可能性があるが故に、確かな利点と同時に、危険性も持つ」と発言、その安全性と健全性、規制遵守の観点から注視する必要があるとの姿勢を明らかにした(仮想通貨Watch)。

新しいものを取り入れるのが上手なシンガポールでは、中央銀行に当たるシンガポール金融管理局(MAS)のメノン長官が、リブラが安価な決済システムを提供し、金融システムにアクセスできない人々(アンバンク層)をサポートするなど、潜在的な利益があると評価した。

とは言っても、やはり巨大テクノロジー企業であるフェイスブックが、どのようにシステムを運用するのかを注視する必要があると語り、野放しにしたくはなさそうだ(COINTELEGRAPH)。

この記事によると、フェイスブックは発表前からMASに接触していたという。日銀も含めあらかじめ、各国の中央銀行に計画を説明しているのかもしれない。