株価上昇 米中貿易戦争、このまま収束するのか 聖域には踏み込まず

5日の東京株式市場は、米中通商協議の進展期待で401円(1.76%)の大幅高で引けた。関税の一部撤回も検討されているというニュースが流れたが、本当にこのまま収束するのだろうか。

株式市場は好感

ウォールストリート・ジャーナルは、4日夜(米東部時間)に、「米中の当局者らは、貿易協議の部分合意に向け一部関税の撤回を前向きに検討している」との関係者の話を伝えた。

米中通商交渉はこれまで、農業と金融サービス、為替問題で大筋合意していた。中国が米国産大豆などの輸入拡大や、金融市場の開放、人民元安誘導に一定の歯止めをかけるなどで合意したという(日経新聞)。

クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は1日、米テレビ番組で「米金融機関は100%出資で中国事業を展開できるようになる」と合意のメリットを強調するなど、協議の成果をアピールしている(同上日経新聞)。

米国側も、12月15日に予定していた中国製ノートパソコンや玩具などに対する新たな関税発動を取りやめると予想されていた。

「追加関税の一部撤廃」ニュース

そこに、米中双方で数千億ドルにのぼる追加関税の一部を撤廃するという新たな相互譲歩のニュースが流れたわけだ。11月に入ってから、協議進展をうかがわせるニュースが多く、株式市場は合意ムードをはやしたて、4日のダウ30種平均は約3カ月半ぶりに過去最高値を更新、2万7462ドルで引けた(日経新聞)(2万7562ドル→2万7462ドルなどを訂正しました。すみません=11月6日)。

トランプ大統領は、習近平主席と11月16~17日に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で一緒に署名して、協議の成果を演出するつもりだったようだが、チリが国内のデモ、暴動に音を上げて、まさかの会議中止を発表。

代わりに、習主席を月内に米国に招くつもりらしく、首脳会談の場所をトランプ大統領は「複数の場所を検討している。アイオワかもしれない」と発言している(ロイター)。

アイオワとは、意外な場所だが、穀倉地帯で米中の関税の応酬に打撃を受けている。大統領選での激戦州のひとつだ。習主席と歓談して、中国による穀物輸入拡大をアピール、来年の大統領選で票を確実にしようというのだろう。

厄介な問題は先送り

「第1段階の合意」とも呼ばれる今回の部分合意は、米企業に対する技術移転の強要や中国政府の国内企業に対する補助金など、中国に対して構造改革を迫るようなテーマについては先送りしている。

むしろ、中国は構造改革どころか、自由な競争を妨げる動きをみせているという。

「欧米の業界団体によると、トランプ氏が貿易交渉をいったん停止した5月以降、中国は情報技術(IT)や通信、自由なデータ移動を制限する複数の措置を講じた」という。そんな制約を受けたら、たとえ、金融市場が開放され、米金融機関が中国に完全子会社を設立できたとしても、事業を成功させるのは難しい(ウォールストリート・ジャーナル)。

さらに、中国は企業版「社会信用システム」の導入を進めているという。中国の社会信用システムとは、所得やキャリアなど社会的ステータスに関する政府のデータに基づいて全国民をランキング化するもので(ウィキペディア)、企業版が実施されれば、「外国企業が制裁対象にされる恐れがある。社会信用システムでは、企業がどの程度中国の法律や規則を順守しているか、アルゴリズムが決定する仕組みになっている」(同上ウォールストリート・ジャーナル)。

こうした中国の姿勢に、米ビジネス界からは今後の米中交渉に期待を抱きにくい。「第1段階で何らかの発表が行われた後、その後どうなるのかは極めて不透明で、単に協議が続くだけで何も結果が出ない状況に陥るリスクがある」と金融会社や輸送などサービス業の業界団体である米サービス産業連盟(CSI)のプレジデント、クリスティーン・ブリス氏は語る(同上ウォールストリート・ジャーナル)。

中国の構造改革に迫る問題は、昨年から米中で平行線をたどっていた(Kobaちゃんの硬派ニュース)。中国共産党支配に関わる聖域だから中国は妥協せず、今後の米中交渉の火種として残るだろう。

その火種を燃え立たせるかどうかは、トランプ大統領の意思にかかってくるわけだが、最近の対中柔軟への姿勢変化を見ると、来年の大統領選に向けて、火種を燃え立たせることにあまりメリットを感じてないようにも見える。そうした柔軟姿勢にビジネス界や議会はどう対応するのだろうか。弾劾調査の進展も当然、トランプ大統領の決定に影響してきそうだ。

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