欧州、中国は暗号通貨発行へ 日銀は発行しないのか 日本はデジタル向きでない?

EU(欧州連合)が、欧州中央銀行(ECB)に対し、暗号通貨(仮想通貨)の発行を検討するよう提言するという。ロイターが5日(グリニッジ時間)伝えた。中国も新法を制定し、発行に向けての準備を始めた。米国はフェイスブックが「リブラ」の導入を計画している。主要経済大国、先端企業が通貨のデジタル化、キャッシュレス化に向かう中、日銀はどうするのだろう。

「リブラに対抗」から生まれた欧州の動き

EUの提言は、「リブラ」への対抗の中から生まれてきたようだ(ロイター)。EUが、暗号通貨への対応策を草案文書にまとめ、その中で、リスクが高すぎる暗号通貨プロジェクトと判断されれば、プロジェクトを禁止するよう提言が盛り込まれた。リブラが念頭にあるのだろう。

リスクとは、マネーロンダリング、消費者保護、決済システム機能、課税、サイバーセキュリティなど、デジタル通貨がもたらす懸念に関わる内容だという。

草案文書は、リブラのような民間暗号通貨プロジェクトの禁止に言及する一方で、中央銀行には、公的な暗号通貨発行を勧めている。中央銀行の独立性はニュアンスの差はあれ、先進国では世界共通だから、ECBがEUの言うことを命令のように受け入れるわけではないだろう。

しかし、ECBのクーレ専務理事は、9月にヘルシンキで開かれたユーロ圏財務相会合後の記者会見で、「中銀が発行する仮想通貨を巡る構想を先に進める必要がある」と述べており、発行に前向きだから、EUの提言に応じていくはずだ(同上ロイター)。

リブラに対する金融当局の警戒感について言い添えれば、リブラは、既存の暗号通貨と異なりドルやユーロに換金できる仕組みを目指している。だから、安心して受け取れる。20億人を超えるフェイスブック利用者をベースに、中央銀行が発行する通貨同様に流通しうるので、現行の金融システムそのものを揺るがす可能性がある。警戒されるゆえんだ(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

習主席が先頭を切って暗号通貨導入

一方、中国は、暗号資産に関する新法が全人代で成立したことを新華社が10月27日に伝えた(ロイター)。

新法は、「暗号資産ビジネスの発展を支え、サイバー空間と情報の安全性を確保する」のが狙い。新法は、暗号資産の研究や、暗号資産への科学・技術の応用を国が奨励、支援するという。

すでに、中国人民銀行は2014年に、紙幣流通コストの削減と通貨供給量の管理強化を狙いに、独自のデジタル通貨発行に向けた調査チームを立ち上げている(同上ロイター)。

中国の暗号通貨導入の動きはトップ主導だ。習近平国家主席は、10月24日に中国共産党中央委員会政治局第十八回集団学習という会議で、「ブロックチェーンを核心的技術の自主的なイノベーションの突破口と位置づけ、ブロックチェーン技術と産業イノベーション発展の推進を加速させよ」と語った(ニューズウィーク)。ブロックチェーン技術と暗号通貨は表裏一体。この習発言で、ビットコインなどの仮想通貨が急騰した。

日本は現金優位だからデジタルは導入しない

暗号通貨発行に向け、欧州が動き始め、中国がまっしぐら突き進む中、日銀はどうかというと発行の意思はないらしい。

10月18日の記者会見で、黒田東彦総裁は、リブラのような暗号通貨を日銀が発行する可能性を問われ、「デジタル通貨の発行は検討していない」と否定している(共同通信)。

また、雨宮正佳副総裁は7月5日に開かれたカンファレンスで、「日本銀行はデジタル通貨を発行すべきか」と題したテーマで講演し、日銀は発行する計画はないが、調査研究は行っていくと語った(仮想通貨Watch)。

たぶん雨宮副総裁の発言を要約したものだと思うのだが、記事を引用すると、「中央銀行がデジタル通貨の発行を積極的に目指しているのは、銀行券の流通が減少している国か、銀行券に関するインフラが十分に整備されていない新興国など一部の国に限定されるという」。

ところが、「日本は銀行券の整備度合いで言うと、世界でも最高水準にある。GDPに対する現金流通高は世界最大であり、可住地面積あたりの金融機関店舗数も世界3位である。また、キャッシュレス化は2018年9月時点で約50%まで進んでいるが、約半分の決済は現金に依存している」。

こうした日本の状況を踏まえて、雨宮副総裁は、「多くの国民に使用されている現金を無くすことは、決済インフラを不便にすることに他ならない」と説明したという。

日本銀行券への揺るぎない自負と自信を感じるが、過信になっていないか気になるところだ。

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