巨額損失のSBG 孫社長の懲りない発言が面白い「反省もしているが委縮はしていない」

「現状の投資先を考えた時に、ほかにも高く買ってしまっている会社はないのか。第2、第3のウィーワークが出てくる可能性はあるのか」
投資の失敗で巨額の赤字を計上したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、そう問われてあっさりとその可能性を認めた。
「同じような懸念はないのかと言うと、あります。たくさんあります。これからも続々と出てきます。犬の散歩とかね、いろんなものが出てきます」

11月6日に行われたソフトバンクグループの2020年3月期第2四半期決算説明会でのやりとりだ。1時間50分にわたる説明会は、同社のサイトで公開されている。上記の質疑は、1時間15分40秒あたりです。

「犬の散歩」とは、米国の犬散歩代行サービス「ワグ」のことで、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは3億ドルを出資して驚かせた。

話が脇道にそれたが、孫氏が言いたいのは、もちろん「第2、第3のウィーワーク」への警報を鳴らすことではなく、続いての発言である。

決算発表資料

「いろいろ出てきますが、でも、安く買えた(会社)というものもたくさん出てきます。価値が減ったものが20数社で、増えたものが30数社で、金額的には減ったのが6000億円で、増えたのが1.8兆円ということで、3勝1敗。このビジネス(ベンチャー・キャピタル)で、10勝0敗というのはそもそもあり得ない話。ベンチャー・キャピタルは世界中に5000社あり、IRR(内部収益率)の平均は13%。ビジョン・ファンドは、その倍近く行っている」。

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方針に一切変わりはない

この認識の延長でこう述べる。
「3勝1敗でどれほど反省しなければならないのか。少しは反省はするけど反省しすぎて委縮する必要があるのか。だから、ファンド2、ファンド3も行きます。方針には一切変わりはない。(今回の失敗は)大波ではなくさざ波というのが私の見方」(1時間43分過ぎ)

孫氏が言う「価値」とは、保有株式の株価総額のようだが、上場株ならば時価がすぐにわかるが、未上場株の株価については、お手盛りで評価しているのではないかとの批判も出やすい。こうした批判に対して、孫氏は、ビジョンファンドに出資している投資家たちが外部の2社に評価を依頼し、投資家諮問委員会などのチェックも入るので、恣意的な評価はできないと反論する。

日本は新しい取り組みが足りない

1時間37分過ぎに、孫氏は、ベンチャー企業、未上場企業の経営の危うさを懸念する質問に対し、こう答える。

「インターネットの揺籃期も全く同じ批判があった。インターネットはガラスの洞窟で、架空の世界で架空のビジネスモデルだと。
ヤフーも無料で大量の情報を出して、入るか入らないかわからない広告に頼っていると批判を浴びた。グーグルもフェイスブックもそうでした。上場したときも赤字でした。その後、時価総額のトップ10に入るようになり、1兆円を超える利益を毎年たたき出している。
むしろ、日本で経済の中心と言われた重工長大の会社が転げ落ちている。日本経済は30年間停滞が続いている。むしろ僕は新しい世界に対する取り組みが日本は足りなさすぎるとの危機感を持っている。
基本的な方針は、20年前のインターネット会社に対する信念、ビジョンと、今回のAI企業に対するビジョン、戦略は、まったく今回の一部の騒動で微動だにしない」。

孫社長は、好き嫌いが分かれる人物で、今回も「またホラを吹いている」と感じる人もいるだろう。しかし、今後のビジョンファンドの行方、そしてその投資先のベンチャー企業がどうなっていくかは興味津々である。

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