米イラン紛争 トランプ大統領の勝ち逃げで終わるか

米イラン紛争をエスカレートさせるのか、と世界が注目したトランプ大統領の演説は、1月8日午前11時半(米東部時間)ごろから始まった。日本では、真夜中の9日1時半ごろ。
トランプ演説後の動きを前回同様、BBCの「Live Reporting」で追った。
トランプ演説の主な内容は、次の通り(BBC「Live Reporting」、日経新聞など)。

①ミサイル攻撃で、米国人は誰も被害を受けなかった(前日夜のトランプ氏のツイートでは、「損害を調査中」としていた)。
②イランは身を引いているようだ。あらゆる関係国にとっていいことであり、世界にとって非常にいいことだ。
③米国はイランに追加の制裁を科す
④私が米国の大統領である限り、イランが核兵器保有を許されることは決してない
⑤英独仏、ロシア、中国に2015年のイラン核合意を放棄するよう求める
⑥米国は軍事力を行使したくない

米国人に被害がなかったことが大きな要因となって、抑制された内容だった。

BBC北米特派員のアリーム・マクブール(Aleem Maqbool)記者は、「テヘランからの報復はまだあるかもしれないが、全面戦争の脅威は少し薄らいだ(have diminished a little)」と見るなど、欧米メディアは、さらなる軍事衝突が避けられそうだとの見方を伝えた。

ソレイマニ司令官殺害を批判していた共和党のランド・ポール上院議員も「退いて、軍事的行動を取らない道を選択したのは好ましい」とツイートした。

暗殺したソレイマニ司令官は、「アメリカにとってはテロの親玉」(中東情勢に詳しい高橋和夫氏)であり、その大物を亡き者にしたのだから、トランプ大統領、米国側にとっては勝利と言える。施設を破壊されたぐらいのミサイル攻撃でチャラにできるなら、勝ち逃げの感覚であり、喜んで抑制的な態度に出るだろう。

しかし、イランにとっては、ソレイマニ司令官は国民的英雄。指導部は、本音ではさらなる軍事衝突を避けたくても、国民が納得するか(BBCがイラン国民に聞いた意見を後述するが、意外と穏当だ)。

トランプ演説前には、イランの最高指導者、ハメネイ師はミサイル攻撃について、「アメリカに平手打ちを食らわせた」「今回の軍事行動では十分ではない。この地域におけるアメリカの存在を消し去ることが重要だ」とさらなる攻撃を示唆していた(NHK)。トランプ演説後に、少しトーンを変えるのか、今後の師の発言が注目される。

演説後の9日午前5時45分、イラクの首都バグダッドで米国大使館などがある地区の近くに複数の小型ロケットが着弾した(現地時間は8日午後11時45分)(CNN)。死傷者はなかった。誰が発射したのかは不明だが、こうした攻撃は今後も消えないだろう。

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【1月9日(木)トランプ大統領演説と、その後】

(BBC「Live Reporting」による)

▽1:29(米東部時間8日11:29)
トランプ大統領が政権首脳に囲まれ、演説を始める。

▽英国のラーブ外相がポンペオ国務長官らと会談のためワシントンに到着

▽BBCがイラン国内で拾ったミサイル攻撃に対する反応。4人載せているが、米国との戦争は否定的だ。

「今回の攻撃は必要だった。戦争はよくないが米国は強いいじめっ子(a big bully)で、止めねばならない。イランはさらにエスカレートさせるとは思わない」Ramisさん

「攻撃は重大なダメージも死傷者も出さなかった。イランにとっては成功ではない。イスラエルと米国は何でも実行可能だ」Afshinさん

「復讐したということをイラン国民に示した行為だった。イランも米国も地域の現状を知っており、戦争したくない。(攻撃は)交渉を始めるための政治的行動だ」Nazaninさん

「今回の攻撃は必要だった。もし我々を害するならば、返礼があることを米国は知るべきだ」Mohammadさん

▽緊張緩和をアピールしたトランプ大統領の演説は支持率向上にあまり効果がなかった。
ニュースウェブサイトの「FiveThirtyEight」によると、米イラン対立の週を通じて、支持率は41.9%周辺、不支持率は53.3%周辺を動いていた。

▽イランのミサイル攻撃について、ロイターが「米欧の政府筋は8日、イランが意図的に犠牲者を出さなかったとの見方を示した」と伝える。
これについて、BBC国防担当のジョナサン・マーカス記者は、「いまのところ不明だが、アルアサド基地を衛星写真で見ると、いくつかの建物を破壊しているので、死傷者がなかったのは、企図されたというより幸運だったように思える」と分析。

▽5:03 「Live Reporting」は、これにて店仕舞い。

▽5:45 イラクの首都バグダッドで米国大使館などがある地区の近くに複数の小型ロケットが着弾(現地時間は8日午後11時45分)(CNN)。

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