パナソニックはテスラをドル箱にできるか 野心に燃えるマスク

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【目次】
テスラの野心的な方針でパナの株価下落
長い付き合いだったのに
新電池はテスラと共同開発
米国の電池工場は黒字定着
ドル箱化にはまだ時間が必要

 気をもんでいたパナソニックの株主も10月30日の株価に顔をほころばせたことだろう。前日夕の2020年7~9月期決算説明会で、営業利益が予想を大きく上回ったことに加え、テスラ向け電池事業の2020年度黒字化期待、それにテスラから新型リチウムイオン電池「4680」の開発要請があったことが材料となって、翌30日の株価は一時8.8%高と急騰したからだ。決算発表前は、テスラ事業の先行きに対して厳しい見方が出てパナソニックの株価は下落、低迷していたのだが、逆転する展開となった。

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テスラの野心的な方針でパナの株価下落

 株価下落のきっかけは、テスラが開催した9月22日の電池技術の発表会「バッテリーデー」におけるイーロン・マスクCEOの野心的な方針表明にあった(ウォールストリート・ジャーナル)。

 電気自動車(EV)に搭載するバッテリーのコストを大幅に引き下げ、3年後をメドに2万5000ドル(約260万円)と現状より1万ドル安いEVを実現する計画を打ち出したのだ。

 計画自体はきわめて前向きなものだが、それを実現するにはコストダウンが必須となる。マスクCEOは、「私を特に悩ませていることの1つは、真に手頃な価格のEVが当社にまだないことだ。われわれがこれから生産するのはそれだ」としたうえで、「だがそのためにはバッテリーのコストを下げる必要がある」と述べ、新しいリチウムイオン電池「4680」の自社開発を表明した。さらに、パナソニック以外の電池メーカーとの協業も印象づけた。

 マスクCEOは、いずれ年間2000万台のEV生産を目指しているという。世界最高の販売台数を競う、トヨタ、フォルクスワーゲンの2倍近い規模で、この大風呂敷の野望への第一歩が2万5000ドルカーなのだろう。

 マスク発言を受け、「日経新聞」は10月14日付け電子版で、「「テスラ電池」パナソニックに影」との見出しで、「テスラを主要顧客とするパナソニックの電池事業の成長減速に対する懸念も出ている」と報じた。パナソニックの車載電池事業の売上高は4735億円(2020年3月期)にのぼり、テスラ向けが多くを占めている。

長い付き合いだったのに

 テスラは、いまでこそトヨタの時価総額を上回る世界的に名の知られたEV企業になったが、パナソニックは、テスラがまだ海のものとも山のものともわからない2010年に出資した。

 2000億円を投じて、米ネバダ州にリチウムイオン電池工場(ギガファクトリー)を建設、2017年1月に稼働、共同運営し、テスラ車に電池を供給してきた。しかし、赤字続きで、テスラの普及車「モデル3」の生産がようやく軌道に乗ったことで、パナソニックの車載電池事業は、2019年10~12月期に四半期として初めて黒字に転じた(ロイター)。パナソニックとしては、長かったテスラとの関係がようやく花開き、収益を期待する時期に入ったといえよう。

 ところが、パナソニックとの協業を軽んじるようなマスクCEOの発言が飛び出し、パナソニックの車載電池の売り上げが減少するのではないかとの声が株式市場で上がり同社の株価は9月下旬から大きく値を下げていた。そんな中、7~9月期の決算発表が行われたのだ。

新電池はテスラと共同開発

 決算説明会では、当然、車載電池事業の先行きについて質問が出て、梅田博和CFO(最高財務責任者)は、以下のように答え、株式市場の懸念を打ち消した。

「テスラと密にコミュニケーションしているのは新しい電池の4680で、テスラからぜひ一緒に開発をやろうと声を掛けられており、すでに開発に着手した」とテスラが勝手に電池を自社開発しているのではないことを明らかにした。

米国の電池工場は黒字定着

 また、売上げ減少の懸念と黒字化見通しについては、「米国のギガファクトリーの黒字化が定着してきている。米国工場の赤字はない」。
「ギガファクトリーは、現在、32GW/hの生産規模だが、来年ぐらいに35GWに到達する。また、2021年度から新たに1ラインを増設し、2022年には38~39GW/hの生産が可能になる」と売上げ減少懸念を打ち消し、「今後2、3年で、5%程度の利益率が視野に入る」と述べた(決算説明会音声記録の18分ごろ、CarWatch)。

 また、梅田CFOは、バッテリーデーで、マスクCEOが、2030年に3TW/hの製造能力に言及したことにも触れ、「3TW/hは、38GW/hの80倍に相当し、到底パナソニック1社でまかなえるものではない。分担してやっていく話だが、4680を確実に開発を進めながら米国市場の拡大をにらむ」と語った(GWはギガワット、TWはテラワット)。

 2030年の大規模電池生産の話は、EV車2000万台生産と同様、マスクCEOならではの真剣みのある大風呂敷で、まだ先のことだろう。

ドル箱化にはまだ時間が必要

 ただし、2万6000ドルカーは、当面の目標として手を打っていくだろうからパナソニックへのコストダウン圧力は強まるに違いない。
前述した車載電池事業の売上げ4735億円と「今後2、3年で、5%程度の利益率」という梅田CFOの見通し、それに生産量増を考え合わせると2、3年後の同事業の利益はかなり大雑把だが300億円ぐらいか。この利益が粗利益か最終利益かで印象は変わってくるが、いずれにしてもコストダウン圧力がかかれば、数字はさらに小さくなる。
パナソニックのコロナ以前の営業利益3000億円、4000億円規模に比べるとまだ主役とは言えない。

 EVはいずれガソリン車に取って代わり大市場になるだろうから、テスラが将来、パナソニックのドル箱となるのは夢ではない。だが、そうなるまでは、まだ時間がかかりそうだ。

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