コロナワクチン「来年1月供給」に遅れはないか

 欧米で新型コロナウイルス感染拡大の勢いを増し、日本も感染者数こそ欧米ほどではないが、11月13日は全国で1694人と過去最多の新規感染者が出た(毎日新聞)。
 

 ワクチンが1月に登場すれば、あと2カ月ほど爆発的な感染拡大に発展しないような対策を取れば、医療崩壊を防げるかもしれない。しかし、春になるまでワクチンが登場しなければ医療崩壊の可能性は高まる。救世主・ワクチンの日本への供給時期を以前書いたことも含め、改めて確認してみた。

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アストラゼネカ 一時中断の影響はなさそう

 日本に一番早く、来年1月にもワクチンを供給出来そうなのは、英アストラゼネカ製のものだ。オックスフォード大が中心になって開発したワクチンで、厚労省と同社との契約で、来年初頭から1億2000万回分のワクチンの供給(そのうち3000万回分については第1四半期中に供給)を受けることになっている。ただし、供給されるのは「ワクチン開発に成功した場合」だ。

 厚労省が契約を発表したのは、8月7日で、臨床試験(治験)の最終段階にあり、年末までに治験結果がわかると同社は言っていたが、9月に治験者に副反応が出て治験を一時中断せざるを得なくなった(FOX)。

 このため、ワクチン製造に遅れが出るのではないかと心配していたが、同社のパスカル・ソリオCEOが、11月5日の決算発表の席上で、ワクチン供給の見通しについて、「11月、12月に治験のデータを分析し、結果が良好ならば、米国や各国で当局の承認を得る」「世界中に数億回分のワクチンを1月から供給するよう準備する」と語った(CBS)。

 どうやら、一時中断による生産の遅れはなく、いまのところ、1月供給の計画は変わっていないようだ。今後数週間のうちに出るだろう治験結果が注目される。

 良好な結果が出れば、英国政府の承認の後に、日本でも承認手続きに入る。つまり、1月に無事、ワクチンが供給されるまでに、
 ①年内に出る治験結果で、有効性と安全性が確認されること
 ②当局の承認。通常ならば年単位の時間をかける審査をどれだけ短縮させるか。
 ③ワクチンの輸送など、医療機関に届くまでの流通体制の整備
       --の条件をクリアする必要がある。
       
 ②については、英国では、再び感染が拡大し、11日には死者が5万人を超えてしまう状況だから、ワクチンへの期待は大きい。「まだ審議しているのか」と世論を苛立たせるようなことはしないとも思える。治験結果によほど見過ごせないデータがない限り早期に承認するのではないか。

特例承認を適用

 日本では、緊急事態時には、承認審査の手続きを簡素化する特例承認がある。先進国で製造販売が認められている薬の審査をスピード化するもので、2009年の新型インフルエンザワクチンで適用された前例がある(国際医療について考える)。

 ワクチンではないが、新型コロナ治療薬のレムデシビルは、製造元のギリアド・サイエンシズが5月4日に承認申請し、わずか3日後の5月7日に厚労省は特例承認した(日経バイオテク)。

 ワクチンは、治療薬と違って、接種人数がはるかに多いからもっと時間をかけるだろう。「1、2カ月はかかる」とテレビで医師が言っていた。そうなると、1月接種は難しい。
 

 いずれにしても、注目すべきは、①のアストラゼネカの治験結果の発表だ。最近ファイザーが発表した「有効率90%以上」で安全性が確認されれば、承認も早いだろう。

▽ファイザーのワクチン、ワクチンの流通体制については、
コロナワクチン 国内接種までの4つのチェックポイント

▽アストラゼネカーオックスフォード大のワクチンについては、
オックスフォード大ワクチンの実力 早ければ1月供給か
無名企業が中核技術を握る オックスフォード大ワクチン
                --の記事があります。

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