脱炭素へ2兆ドル投資 バイデンプランの成否

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目次
「job」の文字がいたるところに
2035年までに発電を脱炭素
半分も実現できれば上出来か
産業界で進むゼロカーボン

 米国で、バイデン新政権がスタートを切ったが、同政権の目玉とも言えるゼロカーボン、インフラ政策は、公約通りに実現すれば4年間で2兆ドルという巨額が投じられる。そのインパクトは、米国ばかりか世界に産業革命をもたらすとの見方まである(WEDGE)。

 米国がゼロカーボンへと政策を大きく転換させる中、産業界でも、気候変動対策を導入しない企業は、取引先から除外される事態が進みつつあり、世界の政治、経済は、気候変動対策・ゼロカーボン抜きには動かない時代に突入したように見える。そこで、新たな台風の目となったバイデン政権の環境政策のスケール、実現性などを改めて調べてみた。

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「job」の文字がいたるところに

 バイデン大統領の気候変動対策のベースになっているのは、2020年7月に打ち出された「インフラ・クリーンエネルギー計画」(以下、バイデンプラン)で、「2050年までに温室効果ガス排出のネットゼロを実現する」という脱炭素化目標を掲げた。任期中の4年間に2兆ドルを投資する件もこの計画に書かれている。

 コロナ禍で経済が大ダメージを受ける中で発表されたバイデンプランがターゲットとしているのは、ゼロカーボンだけではなく、雇用の創出だ。「job」の文字がいたるところに出てくる。

※以下の記述は、電力中央研究所の上野貴弘氏のレポート、「バイデン次期政権の気候変動対策-野心的な公約は実現するのか-」(2020年12月24日作成)に依拠しています。丁寧で簡潔、とてもわかりやすいレポートです。

2035年までに発電を脱炭素

 2兆ドル投資の具体的な内容を見ると、インフラ再建(道路、橋、鉄道、空港、港湾)に多くがつぎ込まれる。

 EV(電気自動車)充電ステーションの50万カ所新設も目を引く。現在、米国全体のガソリンスタンド数は約11万カ所だから、相当な規模だ。太陽光・風力発電の大量導入、200万戸の住宅断熱化など、投資対象をまとめると、こんな感じだ。

(出所)「バイデン次期政権の気候変動対策」上野貴弘 13ページ

 また、ゼロカーボンを促す環境規制がいろいろと盛り込まれており、2035年までに発電を炭素フリーとするクリーン電力基準の策定や、トランプ政権が否定した「2035年までに乗用車の新車をゼロカーボン車(ZEV)にする」というカリフォルニア州知事の規制指示が再認可されることになりそうだ。

 気候外交の積極的な展開も盛り込まれている。トランプ大統領が離脱したパリ協定への復帰、就任100日以内にCO2主要排出国による首脳会合の開催、石炭火力発電など海外のカーボンプロジェクトへの融資停止などを公約した。

半分も実現できれば上出来か

 それでは、これらの公約はどこまで実現されるのだろうか。実現するには、①新たに法律の制定が必要、②既存法を使って大統領令発出、③気象外交は大統領、行政権限で進めやすい--の三つの方法があると上野氏は整理する。

 たとえば、「2035年までに発電を炭素フリーとするクリーン電力基準」や「2030年までに新設商用ビルをゼロ排出化する基準」などは、新法が必要になる。予算措置が伴う政策も立法が必要だが、毎年の予算案や新型コロナ対応の追加経済対策法案に盛り込めば、立法する必要がないという。

 米議会は、上院、下院とも民主党が優勢だ。しかし、上院の議席は民主50、共和50の同数で、議員ではないが議長職であるハリス副大統領の1票のお陰で民主党が主導権を握っている状況。絶対優勢の60議席には遠い。また、民主党内も全面的に、バイデン大統領のカーボンゼロ政策に賛成しているわけではないので、新法による政策実行は容易ではないと上野氏は見る。

 このため、②に頼らざるを得ないが、そこにも難題はある。CO2排出規制を強化すれば、それに反対する州や企業が裁判所に訴え、重要なものは連邦最高裁に持ち込まれるからだ。現在の最高裁は9人の判事のうち6人が保守派。一般に、保守派の判事は環境規制の強化に消極的あるいは否定的なので、最高裁で大幅な排出規制は認められにくいという壁がある。

 こうして見てくると、バイデン計画は、半分ぐらい実現できればいい方なのかなと思えてくる。ただ、それでも「2035年までに新車はゼロカーボン」にというカリフォルニア州のZEV政策が実現されれば自動車業界に大きな影響を及ぼす。すべて実現されなくても、かなりのインパクトを秘めているのは間違いない。

産業界で進むゼロカーボン

 さらに、冒頭で少し触れたが、産業界でゼロカーボンが進んでおり、企業にとって無視できなくなってきた。複合機大手リコーの阿部哲嗣・社会環境室長によると、欧州の商談では、CO2削減を含むESG(環境、社会、企業統治)への取り組みが評価基準に盛り込まれる例が増えたという。

 アップルと取引する企業は、脱炭素が取引の前提になるらしい。iPhoneの画面に使われる光拡散フィルムを製造している「恵和」の長村惠弌社長は、「アップルから『あなたの企業が使うエネルギーは?』と聞かれて化石燃料を出したらその時点で終わり。再エネ導入は最低条件で、その上で技術の勝負になる」とアップルのゼロカーボン本気度語る(毎日新聞)。

 ゼロカーボンは、コスト負担になるのでこれまで導入に消極的だった企業も多いに違いない。しかし、ゼロカーボンは、ビジネスへの参加証になりつつあるようだ。

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