アストラゼネカ製ワクチン 独仏韓、スイスで使用制限 日本はどうする

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 目次
高齢者の治験データ不足
「アストラゼネカ製は若い人に」医師組合
日本はどうする 注目は国内治験データ

 日本でも接種が決まっている英アストラゼネカ製の新型コロナワクチンについて、その効果を疑うニュースが世界で相次いでいる。お隣り韓国でも、2月15日に65歳以上の施設入居者らへの接種を見送る結論を出した。日本では3月中に製造販売承認を審査することになっており、当然、効果が議論の対象になるだろう。海外でなぜ疑われているのか、日本の接種への影響を調べてみた。

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高齢者の治験データ不足

 アストラゼネカ製ワクチンにはっきりと「ノー」を突き付けたのは、1月29日、フランスのマクロン大統領だ。「情報はほとんどない」「65歳以上の人にはほとんど効果がないとみている」と発言した(AFP)。その発言通り、フランスでは65歳以上は接種対象から外れた。

 相前後して、政府に諮問するドイツ予防接種常設委員会(STIKO)は、接種対象年齢を65歳未満に限定するよう政府に勧告した。高齢者への薬効について「データが不足」しているからという(BBC)。

 その後、2月3日に、スイスがデータが不十分だとして承認を保留したことを発表、「安全性や効果、品質についての評価をするため、新たな研究からのデータが必要だ」と指摘した(読売新聞)。

 南アフリカでは、2月7日にアストラゼネカ製ワクチンの接種を一時停止してしまった。南アでは、新規感染者の9割が変異株によるものだが、約2000人を対象に実施した調査で軽~中症に対して「最低限の効果」しかなかったという(BBC)。

 韓国では、療養施設、リハビリ施設などの入所者、職員に同社製ワクチンを先行接種するが、当初、接種予定だった65歳以上の入所者、職員の接種を見送ることを2月15日に発表した。有効性に関する臨床情報を3月末に追加し、再度審議するという(聯合ニュース)。

 こうしてみると、変異種に襲われた南ア以外は、効果がないというよりもデータ不足が二の足を踏ませている。実際、臨床試験では、56~69歳の割合は約8%、70歳以上は3~4%だった(Newsweek)。アストラゼネカ自身もデータが十分でないことを認めている。

「アストラゼネカ製は若い人に」医師組合

 しかし、欧州の医療現場では、効き目に対しても疑う声や副反応を心配する声が強く、ドイツ・ザールラント州では、接種予定になっていた医療従事者200人のうち、半数以上が事前の連絡なしに欠席したという。

 アストラゼネカのワクチンはオックスフォード大の研究がベースとなっている共同開発で、チンパンジーの風邪ウイルス(アデノウイルス)に新型コロナウイルスの遺伝子の一部を組み込んで、人体内に送り込み、抗体を生む仕組みだ(無名企業が中核技術を握るオックスフォード大ワクチン)。

 しかし、欧州では、ウイルス遺伝子(mRNA)を利用した米ファイザーや米モデルナのワクチンの方が効き目があると受け止められており、フランスの医師の労働組合の代表を務めるジェローム・マーティ氏は、「われわれは開業医と歯科医がmRNAワクチンの接種を受けられることを強く要求する」「アストラゼネカ製ワクチンは若くて健康な人のために取っておく必要がある」と主張している。
 
 イタリアでは、3000人の医師を代表する団体が先週、政府宛ての書簡で、「開業医と歯科医師がmRNAワクチンの接種を受けられる」ことを要求している(ウォールストリート・ジャーナル)。

 臨床試験では、確かにファイザーやモデルナのワクチンはアストラゼネカ製よりも高い有効性を示したから、ウイルスにさらされる機会が多い医療従事者には、mRNAワクチンを接種するのは一理あるようにも聞こえる。

 アストラゼネカワクチンの評価がこれだけ低いのは、欧州で同社ワクチンの供給が遅れ、EUとトラブルに発展した経緯があったことも影響しているのではないか。ドイツには同社製ワクチンが約74万回分あるが、実際に接種されたのは約7万回という少なさだ。

日本はどうする 注目は国内治験データ

 日本では、アストラゼネカから6000万人分のワクチン供給を受けることになっている。国内で250人規模の臨床試験を実施しており、海外データと合わせて審査、3月以降に承認の見通しだ(日経新聞)。その際には、当然、65歳以上の接種の是非が論議されるだろう。それまでに、先行している英国での接種データや3万人規模の臨床試験を実施している米国の結果などが出てくれば、判断しやすくなる。

 もしアストラゼネカ製ワクチンが高齢者に効果がないという結果になったら、ワクチン接種のスケジュールにどう影響が出てくるだろうか。見えないことが多くて、よくわからないが、現状を整理しておくと。

 まず、国内の接種スケジュールは、5月以降に16歳以上の一般の人への接種を開始する。それまでに、医療従事者(474万人)、65歳以上の高齢者(3600万人)、基礎疾患のある人、高齢者施設の職員(1020万人)など5100万人の接種を始めることになっている(Answers News)。

 しかし、供給スケジュールは明確ではない。接種が始まったファイザーワクチンは、年内に7200万人分の供給を受ける契約を1月に結んだ。昨夏の合意では、6月末までに6000万人分のワクチンの供給を受けることになっていたが(厚労省)、1月の正式契約では「6月末までに6000万人分」の言葉がプレスリリースから消えていた(厚労省)。さらにひとつの薬瓶から6回分抽出が前提なのに、日本の注射器では5回分しか抽出できない問題やEUの輸出規制が供給スケジュールを不透明にさせている。

 アストラゼネカのワクチンは国内でも生産されるので、3~4月に承認されれば供給は順調に進むとの楽観も生まれる。だが、そこに「65歳以上」問題がからんでくる。接種スケジュールにも影響するだろう。

 2500万人分を供給することになっているモデルナは、5月以降に承認見通しだ。日本は量的には早めに確保しているので、供給3社のワクチンをうまく組み合わせて、何とか効果的な接種を進めてもらいたいものだ。

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