目次
震源は原発から70キロの距離
地震で原発の蓋は壊れないか
問題の格納容器が地震で損傷
福島原発から放射能が漏れていないか--2月13日深夜、強い揺れの地震に驚き、震源地が福島県沖と知って、そう思った人も多いのではないか。その後、大気中の放射線量は高まっていないが、地震が第1原発の損傷を広げた疑いも出てきた。今回の地震が原発から70キロ程度しか離れておらず、今後、同じような大きい地震が原発近くで発生した場合、大丈夫なのだろうか。ニュースを寄せ集めてみた。
震源は原発から70キロの距離
まずは、地震の概要をまとめると。
発生は、2月13日午後11時7分ごろ。震源地は福島県沖の深さ55キロで、マグニチュード(M)7.3だった。宮城県蔵王町、福島県国見町、相馬市、新地町で最大震度6強を記録した。東日本大震災で事故を起こした福島第1原発がある大熊町、双葉町は6弱だった(気象庁週間地震概況)。
グーグルマップで震源地に目印を付けたが、第1原発から震源地までの距離は77キロぐらい。東日本大震災の震源地は180キロぐらい離れていた。テレビニュースを見ていると、福島県郡山市や南相馬市の人たちが、「東日本大震災より今回の方が揺れが大きかった」と話していた。震源が近かったせいだろう。
マグニチュード7.3の地震は、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)と同じ規模だ。震源の深さは16キロ程度と浅く、淡路島北部を震源に東北方向へ地震の強い波が伝わり、震源から約30キロ離れた神戸市東部、芦屋市、西宮市などが震度7の揺れに襲われた。今回の福島県沖地震も震源がもっと浅かったなら、廃炉作業中の福島第1原発に震度7の揺れが襲ったかもしれない。
地震で原発の蓋は壊れないか
気になる事実も明らかになっている。同原発2、3号機の原子炉格納容器の蓋の部分は極めて高濃度の放射性物質に汚染されていると、地震前の1月26日に毎日新聞は伝えている。原子力規制委員会の調査でわかったという。
左に毎日新聞掲載の写真と図を引用させてもらいましたので、蓋部分のイメージがつかめるだろう。核分裂を起こす原子炉を収めているのが圧力容器。それを覆っているのが格納容器だ。圧力容器は破損し、核燃料は溶け、破損個所から大量の放射能が格納容器内にあふれ出て、蓋部分にこびりついたらしい。蓋部分は、1~3号機とも直径約12メートル、厚さ約60センチの鉄筋コンクリート製だそうだ。
どれだけ高濃度かというと、「2号機の蓋の内側部分に付着したセシウムを推計したところ、約2京~4京ベクレル(京は兆の1万倍)、3号機では約3京ベクレルになった。放射線量は毎時10シーベルト前後とみられ、近づくと1時間以内に死ぬほどの強さだ」。一般の人は1年間で1ミリシーベルト以下と線量限度が法律で定められている。「ミリ」だ。
格納容器は、大気への放射能漏出を防ぐ最後の砦。しかし、震度7に耐える強度があるのだろうか、▽地震で蓋が破壊された場合の被害想定、▽補強が可能なのか、▽補強しても廃炉は可能なのか--など疑問が湧く。通常の原発ならば、「ガル」で表す耐震性も、事故後に改めて測定できるはずもなく、恐らく東電や規制委員会もよくわからないだろうが。
問題の格納容器が地震で損傷
そして、福島沖地震では、小さな被害が続いて明らかになった後、要チェックの損傷も起きている。
地震直後に、第2原発1号機で、使用済み核燃料を保管するプールの水160ミリリットルが漏れ出すのが見つかった(NHK
)。
18日、福島第1原発の処理水などを入れているタンクのうち、少なくとも20基前後の位置がずれていたことを東電が発表(ヤフーニュース=共同通信)。
20日には、第1原発1、3号機で、格納容器の水位が低下しているというニュースが流れた(NHK)。1号機(水位1.9メートル)で40~70センチ、2号機(同6.3メートル)で30センチ低下したという。
「東京電力は、地震によって原発事故でできた損傷部分が広がるなどの影響を受け、建屋内に漏れ出る水の量が増えた可能性があるとしています」と、NHKは伝えるが、第1原発の格納容器は、前述した通り、蓋部分が高濃度に汚染されている。その格納容器が今回の地震で損傷を受けたわけだから気になる。個人的にはイエローカードの感覚だ。
もっとも、格納容器が破損するようなことになれば、蓋一枚も容器の奥深くも大差ないのかもしれないが。