中国製ワクチンは「効果が小さい」と中国当局者が認めてしまった

目次
すぐに軌道修正
効果高める改善方法にも言及
70カ国・地域に中国製ワクチン
途上国は、むしろ歓迎?

 中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と、中国疾病対策センター(CCDC)トップの高福主任が4月10日、成都市で開かれた記者会見で語った(BBC)。中国は、途上国へワクチンを無償提供するなど、ワクチン外交を展開中だ。その国策に水を差すような発言が飛び出したのに驚いた。

スポンサーリンク

すぐに軌道修正

 高氏は、その後、人民日報傘下の「環球時報(グローバルタイムズ)」に、「世界のすべてのワクチンが、予防効果の高い時があれば低い時もある」と述べるとともに、効果がないという発言について、「完全な誤解だ」と修正した。

 高氏の記者会見での発言は、ロイターAFPも伝えている。ただ、AFPは、中国のニュースサイト「澎湃新聞(The Paper)」からの引用のようだ。

 BBCが「中国当局が弱気なところを見せるのはまれだ」と書いている通り、中国では、国の政策の都合の悪い部分を政府関係者が自ら認めはしないので、「本当にそんなことを口にしたのかな」と思ってしまうところはある。

効果高める改善方法にも言及

 しかし、記者会見で高氏は、ワクチンの効果を高めるために、いくつかのワクチンを混合させることを、政府として検討していると示唆したという。また、接種回数や期間の変更などが考えられると発言したというから、現行のワクチンには十分な効果がなく、改善する必要性を科学者として感じているようだ。

 高氏は、オックスフォード大学で生化学の博士号を取得し、10年以上、英国で研究していた人物。経歴を見る限り、科学者としては信用できそうだ。2011年に中国の感染症対策の中心となるCCDCの副主任に、2017年に主任に就任した(ウィキペディア)。

 高氏の発言は、国民が知っておくべき重要な情報なのに、BBCの記事によると、中国国内では報道されてないという。一方、発言の修正を流した環球時報は、海外からの中国批判に強く反発するナショナリスティックな色彩の強いメディアだ。米政府は昨年6月、環球時報は独立した報道機関ではなく外交使節団と認定、当時の国務次官補は、中国共産党の支配下にあるプロバガンダ機関だと指摘した(CNN)。高氏は、専門家としての個人の意見を中国共産党のフィルターを通して、海外に向けて発信し直すよう強いられたのだろう。

70カ国・地域に中国製ワクチン

 中国製の新型コロナワクチンは、シノバック、シノファーム、カンシノ・バイオロジクス、武漢生物製品研究所の4種類が中国で承認されている。

 しかし、治験データが外国にほとんど公表されていないため、有効性について不明確になっている。少ないデータの中で、シノバック製については、「ブラジルでの臨床試験の結果、有効性は50.4%とされている。これは、世界保健機関(WHO)がワクチン承認の条件としている50%をわずかに上回るものだ。
 トルコとインドネシアで実施された後期臨床試験の中間結果では、シノヴァクの効果は65~91%とされている」(前出BBC)。

 その一方で、中国はワクチンを外交手段として最大限に使っており、4月初めの段階で、中国製を承認・契約した国・地域は70に達する。このうち37カ国・地域がワクチン寄付を受けている(日経新聞)。

 ワクチン供給を通して中国は、新興・途上国への影響力を強めており、南米ガイアナは中国の寄付表明を受けた後に台湾と対外事務所開設の合意を破棄した。

途上国は、むしろ歓迎?

 そんな中での高氏の発言だったが、ワクチン入手の望みがない途上国にとっては、多少、効果が落ちるとわかっていても、接種をためらったり、ましてや断ったりする国は出てこないだろう。むしろ、ワクチンの効果を高めるよう改善を志す高氏の発言は歓迎するに違いない。高氏は、そのあたりの事情を承知したうえで発言したのかもしれない。

スポンサーリンク

シェアする

フォローする