アストラゼネカ製ワクチン 血栓の心配に欧州が新たな指針

目次
いったんは使用再開したが
血栓との因果性はありそう
どれほどの割合で発生するのか
日本は5月に承認か

 日本でも接種が決まっているアストラゼネカ製ワクチンは、血栓症の誘発が懸念されているが、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「アストラゼネカのワクチンは有効性の点から見て良いワクチンだと思う。欧州連合(EU)で安全性の問題が解決されれば、素晴らしく有効だ」と述べた。4月13日の英BBCラジオでの番組上だ(ロイター)。

 ファウチ所長は米国民からの信頼が厚い免疫学者。その人物が、効果はあるが安全性にチェックが必要、と発言しているのが気にかかる。先行して接種している欧州の状況を調べてみた。

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いったんは使用再開したが

 血栓不安が広がったのは3月中旬前後からで、デンマークは、3月11日に、2週間接種を見合わせると発表した。続いて、ノルウェー、アイスランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペインも使用を止めた(BBC)。

 しかし、EU(欧州連合)の医薬品庁EMAは3月18日に「安全で効果的なワクチン」(NHK)、WHO(世界保健機関)は19日に「接種と血栓に相関関係はない」という調査結果を公表したこともあり(NHK)、いったんは、使用を再開する国も出た。

 ところが、ドイツで、接種した270万人のうち31人に血栓が生じ、その大半が、若年から中年にかけての女性だったとの調査結果が出て、60歳未満への投与を制限するなど方針が揺れてきた(BBC)。

 
血栓との因果性はありそう

 そんな経緯を経て4月7日、EMAと英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は同社製ワクチンの使用に関する新たな指針を発表した(ウォールストリート・ジャーナル)。

 両当局とも、「非常にまれに発症する血栓と同社製ワクチンが関連している可能性があると認め、死亡につながったケースもある」と血栓の犯人とは断定しないが、いわば有力容疑者として認定したようで、医師に「ワクチン接種後、血栓の症状に気をつけることを促した」。

 接種の是非の判断については、EMAは、「EU加盟国に対し、全ての年齢層でワクチン接種を継続することを勧告した(ただ一部には、接種を中高年層以上に限定すると決めた国もある)」。

 一方、英国では、政府の独立委員会は「30歳未満の成人には可能な限り代替ワクチンを提供すべきだと勧告した」。

 英国で年齢制限の判断を示したのは、新型コロナは、高齢者になるほど重症化や死亡の確率が高まることを考慮に入れたからだ。コロナに感染して死亡するリスクとワクチン接種で血栓症にかかるリスクを天秤にかけて、中高年者と若い人とを分けた。

どれほどの割合で発生するのか

 血栓を引き起こす割合は、どの程度なのだろう。欧州では4月4日までに域内で3400万人がワクチン接種を受けているが、その中で、血栓症になったのは222例だった。100万人に6、7人の発生頻度だ。

 222例のうち169例は、脳静脈洞血栓症(CVST)と呼ばれる脳内の血栓症で、残りの53例は別のまれな血栓症だった。CVSTは通常、100万人につき年間2~4人程度の発症だそうで、それよりも頻度が高い(前出ウォールストリート・ジャーナル)。

 条件を整えなければ比較にはふさわしくないかもしれないが、インフルエンザワクチンの場合、国内では、5250万回中の接種で、重篤約250人、死者3人が出た(厚労省、2018年10月~19年4月)。

 EMA、MHRAは、同社製ワクチン接種後4日から2週間以内に以下の症状がある場合、直ちに医師の診察を受けるよう呼びかけている(ニューズウィーク)。
・呼吸困難 ・胸の痛み ・足のむくみ ・持続的な腹痛(腹痛)
・重度で持続的な頭痛やかすみ目などの症状 ・注射部位以外の小さな血斑

 日本は5月に承認か

 日本はアストラゼネカと1億2000万回(6000万人)分のワクチン供給を受ける契約を結んでいる。日本が調達する3社の中で、唯一国内で生産することから、
安定供給が期待されている。

 2月5日に厚労省に承認申請を提出し、現在は審査中で、政府は5月中の承認を目指している。当初は、3月末までに3000万回分の供給を受けることになっていたが、承認が進んでいないため計画が遅れている(朝日新聞)。

 血栓の問題については、4月12日の衆院決算行政監視委員会でも取り上げられたが、菅首相の答弁は、
「詳細な情報を収集し、承認の可否や使用条件を判断する」「接種と血栓に関する情報を薬事審査中だ」と無内容だった(日経新聞)。

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