日本の軍事力増強を支援 対中競争法案

目次

対中戦略に不可欠の台湾
日本に長距離ミサイル装備を支援
同盟国への強いシグナル

 日本の軍事力増強を期待する法案が米上院外交委員会で審議されている。日本のメディアにはあまり取り上げておらず、韓国の「朝鮮日報」の記事を読んで、そんな法案があることを知った。

 法案の狙いは、グローバルな影響力を高めつつある中国に対抗することにあるが、その戦線に同盟国、パートナー国を誘いこもうとしている。インド太平洋地域で、法案が当てにしているのが日本とオーストラリアだ。

「戦略的競争法2021」と呼ばれるこの法案は281ページにわたる長文だが、冒頭から「中国が関与する問題を解決するために」と中国を名指しで、”問題児”、”厄介者”とみなす言葉を掲げている。

 この法案が超党派による提案というのも重要なポイントだろう。法として成立すれば、民主党・バイデン政権から共和党政権に代わったとしても、米国の対中スタンスの基本は変わらないからだ。

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対中戦略に不可欠の台湾

 朝鮮日報は、法案の狙いをこう伝えている。

 米国が「同盟国やパートナー国と協力し、軍事と経済の両面において中国を締め付けると同時に、最先端の科学技術を米国が先に確保し、長期にわたる競争で勝つことを目指す」

 法案は、”インド太平洋地域において、米国の政治的な目的の達成に必要な軍事投資を優先させる”よう強調し、具体的には、2022年から26年に6億5500万ドルを海外軍事基金に当て、同じ期間に4億5000万ドルをインド太平洋の海洋安全保障に当てるよう提案している(Reuters)。

 中国との軍事、経済的な競争に限らず、新彊ウイグル人弾圧への制裁や香港の民主化支援のような人権、民主的な価値への取り組みも視野に入れている。

 何と言っても中国を刺激しそうなのは、”台湾は米国のインド太平洋戦略の重要部分”と位置づけ台湾との友好を深めるよう政府に求めていることである。

日本に長距離ミサイル装備を支援

 法案の概観は以上の通りだが、冒頭で述べた「日本の軍事力増強に期待」の部分は、第2章「同盟国、パートナーへの投資 SEC.223」(法案原文139ページ)にある。

「日本が、長距離精密火器、防空・ミサイル防衛力、海上安全保障、情報収集・分析、相互運用性、偵察・監視能力を発展させることを支援する」
「日米相互の安全保障に貢献する新技術を開発する民間協力を進め、支援
する日米安全保障革新ファンドをスタートさせる」。
「日本とオーストラリアのより深化した防衛関係を促進する」といった項目である。

 長距離精密兵器(long-range precision fires)とは、長距離ミサイルのことだろうか。自衛の域を越えた兵器に思えるが。

同盟国への強いシグナル

 中国を標的としたこの法案に、当然、中国は猛反発し、外務部の趙立賢報道官は、記者会見で「断固として法案に反対し、米上院に米中関係の安定化を促すことにもっと取り組むよう要求した」(前出Reuters)。
 
 法案は、4月21日に外交委員会で採決され、上院本会議に送られる。ワシントンでは、習近平政権下の中国は、米国の価値観と利益に深刻な脅威を与えるとの認識が党派を超え高まっており(米ニュースサイトAXIOS)、あまり修正されずに成立するのではなかろうか。

 もし成立すれば、「米国の同盟国、バートナーに対し、米国が北京への外交姿勢(approach)で一致したことを知らせる強いシグナルとなるだろう」とリサ・カーチス・元国家安全保障会議(NSC)部長は語っている(同上AXIOS)。 

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