数字を見て、その大きさに目を疑った。5230万回分のワクチンがすでにEUから日本へ出荷されているというのだ(ブルームバーグ)。日本の接種率は1%に満たないという現実、政府の接種スケジュールを考え合わせるとわかに信じ難い数字だ。しかし、記事に誤りがなければ、日本のどこかに大量のワクチンがストックされていることになる。
日本の接種率は先進国最低の1%
ブルームバーグのNikos Chrysoloras記者がEUの内部文書を基に書いた記事だ。この文書は、EU本部のあるブリュッセルで4月21日にEU加盟国大使に回覧されたという。
それによると、EUは、1月31日から4月19日までに43カ国向けに1億3610万回分のワクチン輸出を許可した。日本が最大の輸出先で、約5230万回分。次いで英国向け1620万回分、カナダ向け1280万回分だったという。
どこの会社製のものかは書かれていないが、日本で接種が始まった米ファイザー製か5月に使用承認が認可される見通しの英アストラゼネカ製だろう。両社ともベルギーなどに工場を持っている。いずれも2回接種が必要なワクチンなので、人数に換算すると2600万人分の量になる。
しかし、日本での接種率は4月19日時点で0.96%と1%に満たないのだ(1回でも接種した人の割合)。120万人程度しか接種を受けていない。OECD加盟37カ国の中でダントツの接種率最下位、世界182カ国中でも131位という有り様だ(Yahooニュース)。
ワクチン接種の遅れは感じていたが、改めて数字を確認すると、とても先進国とは言えない水準だ。PCR検査の少なさ、病床数は世界トップクラスなのに医療崩壊しやすい、接触確認アプリ「COCOA」の致命的なミス、そして異常に遅いワクチン接種など、日本のコロナ対策は、肝心かなめのところで国民の期待を裏切り、コロナに負けている。
日本人の衛生意識とコロナに強いアジア人の「ファクターX」のお陰で何とか「敗走」を免れていると言えそうだ。
ブラックボックスのワクチン情報
ワクチン接種の遅れは、EUの輸出規制などが影響して入荷量が少ないのかと思っていたら、実は2600万人分入っていたというから驚きだ。接種人数120万人とはあまりにも差がありすぎる。まだ承認されていないアストラゼネカ製が大部分を占めているとか、ここ数日の間に大量に入荷したという可能性もあるが、まさか、そんなこともあるまい。
アストラゼネカ製は、当初、3月末までに3000万回分を輸入する予定だったが、欧州が輸出許可制になったことや承認が得られてないことなどから輸入は遅れている。同社日本法人の担当者は「承認されていない段階で先走ってつくり、廃棄することになってしまっては意味がありません。接種の進み具合をみて供給していきたいです」と朝日新聞のインタビューで答えている。なので、欧州発のワクチンはほとんどファイザー製と見ていいだろう。
とにかく、政府が提供するワクチン情報があまりにも少なすぎる。ブラックボックス状態だ。自治体も情報が少ないのに困惑させられてきた。意図的に隠しているという疑いも湧いてくる。とりあえず、ブルームバーグの記事の正しさについて、イエスかノーで答えてもらいたい。