仲良さそうに見える中国とロシアの関係 実はドロドロ 『ロシアと中国 反米の戦略』廣瀬陽子

 中国とロシアはいつも足並みをそろえているように見える。国連安保理でシリア非難の採決になると、常任理事国の中でロシアと中国だけは拒否権を繰り返し行使してきた。北朝鮮問題でも、先日、中ロ朝の次官協議が対北朝鮮制裁の見直しを求める共同声明を発表した。「中ロVS欧米」という図式は堅牢に見える。

しかし、この『ロシアと中国 反米の戦略』(ちくま新書、廣瀬陽子著 筆者は慶応大学総合政策学部教授)を読むと、中ロは、根底にお互い強い不信感を持っていることがわかる。

中国の西進策を警戒

もっとも、表面は友好を保っても、水面下では火花を散らす関係は国際社会では珍しくない。東西冷戦下の中ソ関係も国際社会からは同じ共産国家として結束を誇ってるように見えたが、1969年にアムール川の島の領有権をめぐって中ソの軍事衝突が起きて、世界を驚かせたことがある。

21世紀の中ロの不信感の源は中国の西進策だ。西進と言うと、一帯一路政策やAIIB(アジアインフラ投資銀行)を思い起こさせるが、実は中国はその前からエネルギーでロシアの影響下にある国と関係を結んできた(同書64㌻以降)。

カザフスタンの原油、トルクメニスタンの天然ガスである。中国はパイプラインを建設し、それらの国からエネルギー資源を買っている。ユーラシアにおいては、「ロシアは政治・軍事面で、中国は経済面で影響力を及ぼすという棲み分けをしてきた。そのためロシアは名目的には中国向けのパイプラインに支持を表明している」そうだ(66㌻)。

しかし、カザフもトルクもかつては旧ソ連邦構成国で、いまも中央アジアはロシアの勢力圏にある。そに地域に中国がエネルギー網を手中に収めながら影響力を強化しつつあることにロシアは危機感を強めているという(同)。経済とインフラへの中国の影響力が政治の領域にも広がらないかと気が気でないわけだ。

実際、「最近、中央アジアへの影響力行使は経済分野を明らかに超えており、ロシアの権益を明らかに侵害し始めている。」(103㌻)といい、同書は、中国とウズベキスタンとの関係緊密化の例などを挙げている。

そして、習近平国家主席が熱心に進める「一帯一路」の登場である。ロシアは北京-モスクワ間の高速鉄道プロジェクトに関わったが、シベリア地域を通るとされていた鉄道ルートはロシアのほとんどの領域を通過しないルートに変更された(99㌻)。「ロシア側が一帯一路に期待していたものと実態はかけ離れており、プーチンをはじめとした当局やオリガルヒ(財閥)の懐疑心は強まっていると言われる。」(92㌻)。

ウクライナにロシアへの核報復を約束?

2014年のロシアのクリミア併合の時も微妙だった。中国は、国連での併合の賛否をめぐる決議の時には棄権して意思表明せず、欧米の対ロ制裁を非難した。消極的な指示ではあったが、孤立するロシアにとっては、中国は救世主だった。「中ロ蜜月」に見えた。しかし、実は、中国はロシアのウクライナ侵攻が気に入らなかったという。

中国とウクライナの関係については、国際政治の素人には、驚くべきことがこの本には書いてある。両国は、ヤヌコーヴィチ大統領時代に「中国ウクライナ友好協力条約」を締結している。「その中に、もしウクライナが核の脅威に直面した場合には、中国が相応の安全保障を提供する条項があると言われている。」(139㌻)。

ウクライナが核の脅威に直面する時と言えば、その相手はロシアをおいてほかにない。つまり、この秘密条項は「ロシアがウクライナに核兵器を使用すると、中国がロシアに核兵器で反撃するという約束だとも言える」(同)というのだ。

中国がウクライナに接近する理由は、東部の軍需産業の存在だ。中国は、「ウクライナから多くの(軍事)部品などを輸入してきただけでなく、ロシアが対中警戒心から供与を拒んできた軍事技術や兵器などについてもウクライナからかなり得てきたのである」(150㌻)。

ウクライナと良好な関係にある中国にとって、「ロシアがウクライナに介入し、軍需工場が集中するウクライナ東部の騒乱をあおってきたことに中国は大きな反発を抱いているはずである」(187㌻)。

しかし、中国とロシアは「対米」では、共闘してきた仲でもある。ウクライナ危機が「ロシアVS欧米」の構図となり、ロシアを批判するわけにはいかなくなった。

「中国はジレンマに追い込まれたわけだが、結果としては、控えめにロシアを支援するという絶妙のバランス感覚を示した」(同)というわけだ。

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