このデータベースがすごい! №2 過去の有価証券報告書を探すなら、ここ

インターネット上のデータの泣き所は、ネットの歴史が浅いだけに古いデータが乏しいことだ。前回、紹介したセントルイス連銀の「FRED」は、1920年代からの経済統計をそろえている破格のデータベースだった。連銀のような公的組織だからこそ可能な芸当で、民間企業が過去のデータを保存し、無償で提供するのは大変なことだ。

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EDINETを上回る力量

最近、知人のKさんに教えてもらった「株主プロ」は、その大変なことをやり遂げている。上場会社の有価証券報告書を10年以上も前の分から無料で閲覧できてしまう、金融庁が管理する「EDINET」を上回る利便性なのだ。

Kさんに教えてもらったきっかけは、北海道全域が停電になった理由について先日書いた原稿(Kobaちゃんの硬派ニュース)。ダウンした苫東厚真発電所(石炭火力)にはなぜか3号機がないことにちょこっと触れた。

すると、その原稿を読んでくださったKさんが、北電の2006年度有価証券報告書に3号機のことが書かれていると教えてくれた。

確かに17㌻に、「また、当連結会計年度において、新技術である加圧流動床複合発電(PFBC)の実証も兼ねて導入した苫東厚真発電所3号機を廃止した」「出力8万5000kw、2005年10月廃止」と明記されていた。

Wikipediaでも、苫東厚真発電所を検索すれば、廃止のことが書かれている。
「3号機は商用としては世界初の加圧流動床複合発電(PFBC)方式を採用し、1998年3月に運転を開始した」が、「配管の摩耗や損傷などによるトラブルが多発して、2005年10月に廃止された」

ただ、Wikipediaの原稿の出典は、日経新聞で、リンクもすでに切れている。Kさんは、北電の確かな1次資料にまでさかのぼってくれたのだ。

有価証券報告書と言えば、金融庁が管理するEDINET(エディネット)が有名だが、こちらは、過去5年分しかストックされていない。企業分析のプロのKさんは、「EDINETや会社のサイトでは過去情報が不十分なときに、株主プロを使う」そうだ。

「株主プロ」では、上場企業の2006年3月期の有価証券報告書が閲覧できる。運用しているのは、東京千代田区にある「有報データマイニング」という、企業が公表するデータの分析と配信を行っている会社だ。分析対象となるディスクロージャ(情報開示書類)は、国内の上場企業約4000社と公募投資信託約2800本にのぼる。

Kさんの話では、有価証券報告書をストックし、無償提供しているサイトは、ほかにも2、3あるそうで、そのひとつ、「有報リーダー」は2005年3月期から取れる。

「株主プロ」には、こんな趣旨のことが書かれている。
有価証券報告書など企業が公表するデータは、本来、全ての投資家に利用されるべきだ。ところが、現状は、プロ向けの有料サービスを利用できる投資家とそのサービスを利用できない投資家の情報格差がある。この格差を是正しようと無料で情報を提供している、というのだ。

公表情報は皆のもの、という情報の民主化を実践している貴重なサイトである。

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